『世界カフェ紀行 5分で巡る50の想い出』 旅のお供にちょうどいい一冊
2024.05.13 00:00
![](https://www.tjnet.co.jp/wp-content/uploads/2024/04/f175ba2f8e689529f8868192dbe9a515-712x1024.jpg)
いいカフェがある街はいい街。
各地をほっつき歩いているうちに、そう思うようになってきた。ひと息つこうとなんとなく立ち寄ったカフェのコーヒーが思いのほか美味しかったり、内装や音楽が素敵だったり、ちょっとした出会いがあったりすると、その街の印象ががらりと変わることもある。
今のところ私的No.1カフェはサラエボの「Zlatna Ribica」。ゆらめくランプに彩られた店内には形もばらばらな机やソファが点々と置かれ、壁一面にアンティーク雑貨や昔のレコードなどがびっしり。カフェオレも絶品だった。次点は北キプロス・レフコシャの「Kumda Kahve」。古い家をリノベーションしたカフェで、トルココーヒーやローズヒップティーが驚きの美味しさで内装も落ち着いた雰囲気。常連客に交じって何時間でも居られそうだった。
ほかにも思い出のあるカフェは枚挙にいとまがない。だらだらと過ごすのが前提の場所だけに記憶にも残りやすいし、なにより個性あふれる空間が自分の旅時間を豊かにしてくれる。
というわけで前置きが長くなったが、今回ご紹介するのは世界各地のカフェをテーマにした50本のミニ・エッセイ集。渋谷のカフェ「ドゥ マゴ パリ」(現在休業中)のフリーペーパーに寄稿されたエッセイのアンソロジーだ。
城山三郎、鈴木清順、吉本隆明など少し前の時代のそうそうたる文化人の名前が並ぶ。歴史の厚みを感じるウィーンのカフェ、ジョドブールの怪しいラッシー、チュニジアの坊やが運んできた甘いチャイ。カフェの思い出を語ることは土地への思い入れを語るのと同じこと。さらりと読める分量なので、旅のお供にちょうどいい一冊だ。読みながら自分の思い出のカフェについて思いを巡らすのもまた楽しい。
![](https://www.tjnet.co.jp/wp-content/uploads/2024/04/27f8df253368c42861b9b2fd8c27289a-1.jpg)
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
カテゴリ#BOOKS#新着記事
キーワード#山田静#新着記事
アクセスランキング
Ranking
-
釜石市、持続可能な観光でまた称号 日本初のゴールド賞 鍵は地域のマネジメント
-
米国、グローバルエントリープログラムを本格運用へ 東京・大阪の面接会に参加多数
-
6月の客室利用率は前年割れ 閑散期と単価重視が影響
-
ファーイースト・ホスピタリティ、日本で3軒目のホテル運営開始 3倍の2000室に拡大へ
-
日本籍船のディズニークルーズ誕生へ オリエンタルランド参入で市場に活気
-
競争入札と談合 成長領域の落とし穴
-
日本でも金融×旅行の流れ 三井住友カード、外資系OTAと提携
-
ベルトラ、韓国大手OTAと提携 インターパークに訪日商品供給
-
『奏で手のヌフレツン』 壮大な神話のような読了後の満足感
-
ニューカレドニア観光局が休局 情勢不安で打撃 日本の回復も遅く