<PR>未来世代の交流活性化へ 韓国の観光素材と教育旅行の親和性

2023.09.25 00:00

現在も復元事業が行われている景福宮

コロナ禍が収束し、日韓関係が改善に向けて動き出すなか、韓国観光公社が力を入れる市場の1つが教育旅行だ。8月には日本の中学・高校教職員を対象に大規模視察旅行が実施された。

 韓国市場が活発化している。23年上半期の訪韓日本人旅行者数は86万2000人(韓国観光公社調べ)。コロナ禍前の半数程度にとどまるものの、日本人の渡航先トップとなった。

 こうしたなか、8月3~6日の4日間、韓国観光公社主催による「訪韓修学旅行50周年記念韓国教育旅行教職員視察ツアー」が実施された。1972年に日本から韓国への修学旅行が開始され50年を迎えたことを記念して日本の中学・高校教員を対象とした視察旅行で、全国77校の教職員と自治体関係者100人が参加した。

景福宮では韓服姿が目立つ

 最初に訪れたのはソウル市内にある朝鮮時代の宮殿・景福宮。朝鮮国王の政務の場として1395年に創建された正宮で、復元事業によって古の姿を取り戻しつつある。この日、ソウルは34度まで気温が上がったが、湿度が低いので日陰は比較的過ごしやすい。韓国の伝統衣装である韓服を着ている人が多いのは、韓服を着ると入場料が無料となるから。市内には韓服のレンタル店も多く、若い人に人気が高い。

 ソウル中心部にあるHiKR(ハイカ)グラウンドは22年7月、韓国観光公社ソウルセンターにオープンした観光広報施設だ。2階のK-POPグラウンドでは「地下鉄」「コインランドリー」など個性的空間でパネルを直接操作して色や映像を選択し、好きなK-POPを流しながら自分だけのミュージックビデオを制作できる。一人一人の感性で自由に表現・体験できる点が興味深い。K-POPに親しむ日本の生徒たちに最適で、交流プログラムで現地校の生徒と一緒に訪れれば、一層有意義な体験が期待できる。

仁川で成長の歴史たどる

水道局山タルトンネ博物館

 ソウル西側に隣接する仁川広域市。水道局山タルトンネ博物館はかつてここにあった貧しい人々の集まる集落タルトンネをテーマとした博物館で、1960~70年代の人々の暮らしを実物大のジオラマで再現している。周辺には真新しい高層アパートと古い住宅街が混在しており、かつての庶民に生活が厳しかった時代をはっきり感じとれる。

 仁川は日本でいえば横浜のような港町だ。19世紀末から形成された旧日本人街や中華街を電動カートで手軽に巡れるのが開港場eジーツアー。中華街から、路地に童話の世界をデザインした松月洞童話村、かつての日本人街で歴史的な建築が数多く残る開港場通りなどを巡る約1時間のツアーで日本語による案内もある。

 6月29日には仁川市内に国立世界文字博物館がオープンした。紀元前2000年ごろの円形船粘土版をはじめ、人類の文字の歴史を見てさわって学べる施設で、タッチパネルで日本語の解説を表示したり、精巧なレプリカに実際に触れて文字を感じとったりと多彩な学習が可能だ。

Gタワーから望む松島国際都市

 世界文字博物館は2003年から整備が進められた仁川経済自由区域(IFEZ)の松島国際都市に位置している。干拓地を埋め立てた人工島で、物流施設や大学、コンベンション施設、観光施設などを備えた経済特区だ。その中心に位置するGタワー33階には松島国際都市を一望できるIFEZ広報館がある。緑豊かで運河が整備されたセントラル公園には水上タクシー(遊覧船)が運航されており、特に日没直後の夜景が美しく印象的だ。

国際人材育成のコンテンツ

 視察を終えた参加者からはさまざまな感想が聞かれた。「HiKRグラウンドのような日本にはない柔軟な発想が勉強になった」(都立高校教諭)、「世界文字博物館は語学を学習する生徒に良い刺激となる」(青森県立高校教諭)、「貧しい時代の博物館の近くに国際新都市があり、その対比が興味深い」(長野県私立高校教諭)など、韓国の観光素材と教育旅行の親和性を指摘する声のほか、「世界的に物価が上昇するなか、コストパフォーマンスが高い」(青森県私立高校教諭)、「韓国の生徒は英語が流暢なので語学研修に最適」(大阪府立高校校長)といった声もあった。

 日韓関係の改善や中高校生に浸透した韓流ブームなどを追い風に、韓国教育旅行は再び成長しつつある。

日韓の関係者が意見交換 ソウルでシンポジウム開く

 研修旅行中には日韓の教育旅行関係者が集い、日韓未来世代観光交流活性化シンポジウムが開催された。基調講演を行った東洋大学国際観光学部の越智良典客員教授は海外教育旅行について、国際社会に生きる広い視野を持ち相互理解を進めるための基本的な行事と指摘。学校交流が基本で、交流の持続と日韓共同での交流プログラム構築が重要と述べた。韓国文化観光研究院のチョ・アラ研究委員は日韓のZ世代が互いに相手国を好んでいるとし、日韓とも教育旅行が小規模の教育体験学習に切り替わっており、互いの地域問題をグローバルな視野で考えることが大切と提言した。

 会場には韓国の教職員も参加してテーブルごとに意見交換と交流が行われたほか、観光業や自治体による商談会も実施された。

 シンポジウムに参加した日本修学旅行協会の竹内秀一理事長は「訪韓修学旅行を盛り上げたいという韓国の本気が伝わった。良い関係を築くには若い人の交流が絶対に必要。日韓の生徒たちはK-POPやアニメなど共通の話題が多く壁がないので国際交流の機会として最適」と述べた。

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