世界一のサービスマン・宮崎辰氏が語るサービスの本質

2023.08.07 00:00

おもてなし経営研究所が6月20日に東京国際フォーラムで開催した第20回おもてなしホスピタリティセミナー。メートル・ドテル(サービスチームの最高責任者)として数々のグランメゾンで活躍した宮崎辰氏がゲスト講師を務め、「サービスマインドの醸成~感情接客」をテーマに、レストランサービスにおける役割について語った。

 人の感情は「先」や「元」に出ると考えます。レストランでお客さまのどこを見ているかというと目元、口元、毛先、足元です。そこに出る感情をくみ取り、どうしたらお客さまに喜んでいただけるかを考えます。足元にはくつろいでいらっしゃるのか、落ち着かないのかが表れます。女性の方は髪にこだわりがある方が多いので、質にまで気を配る方はどのようなライフスタイルかを感じ取ることもできます。目の奥にあるその人の感情や喜びなど、どうしてほしいのかを探り、何をすれば喜んでいただけるか、すべき行動を選んでサービスをする。これが接客です。

 私はレストランサービスマンですので、自分の役割となぜサービスをするのかについてレストランを軸にお話しします。良いレストランとはキッチンとサービスの関係性が良く、それぞれコミュニケーションが取れているところです。いくら良いサービスをしても、キッチンとサービスの関係性が悪いとよどんだ空気になってしまいます。

 さて、自分の役割とは何でしょうか。まず会社の利益に貢献することです。どんなに良い料理(商品)やおもてなしがあってもお金を頂かない限りビジネスとしては成立しません。ですので、レストランの利益のために100円でも多く払っていただけるよう努めます。1万、2万、3万円のコースがあるなら一番利益率の良いところを意識しますし、ワインも予算が5万円の場合でも、6万円のワインの方が料理との相性は抜群に良くなりますよとご提案すれば、予算を超えるけど飲んでみようと考えていただけるかもしれません。

 メートル・ドテルとしては何よりお客さまに喜んでいただくことです。そして、未来のお客さまをどれだけ創れるかということです。私の所属するレストランにはメートル・ドテルが4人、ソムリエが4人いますが、それぞれ顧客を持っていて予約が直接個人に来ます。私もLINE、メール、インスタグラムなどいろいろな経路で予約をいただきます。店の電話も予約サイトもありますが、サービスマンとしての存在価値はお客さまからご指名をいただけるかどうかなのです。

 スタッフはお店の顔となって、休日も名刺を常に携帯し、プライベートで知り合った方にも「ぜひレストランにいらしてください」とごあいさつします。SNSでつながった海外のお客さまが来店することもあります。感情が届けば集客になるのです。私のレストランは2カ月先まで予約が取れません。その理由の1つに料理だけでなく地道なサービスの努力があるからなのです。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年8月7日号で】

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