リージェンシー・グループの沼能功会長が語るラグジュアリートラベラーが求めるもの

2023.06.12 00:00

5月に開催された国際ウェルネスツーリズムEXPOのセミナーにラグジュアリートラベル専門の旅行会社リージェンシー・グループの沼能功代表取締役会長兼社長が登壇した。旅行形態や動向から特徴を分析、コロナ後の変化も踏まえ、ラグジュアリートラベラーが真に求めているものを説明した。

 ラグジュアリートラベラーというとお金持ちで高額消費する人と思われがちですが、あくまでも文化を理解できる文化人です。海外でも国内でも、個人のトラベルコンサルタントや会社オーナーなら秘書を通じて、またはクレジットカードのコンシェルジュサービスデスクから依頼が入ります。そこから日本ではDMCやコンシェルジュサービスを通したり、ホテルや旅館に直接入ったりして、移動やガイド、アクティビティーへと流れていきます。

 求めるものは作り上げられたものでない本物の体験。さらに五感で感じる体験、道を究める人との対話、現地の人との交流、未開発な場所です。説明しなくてもライフスタイルを熟知しニーズを理解しているトラベルコンサルタントを通して旅行をアレンジし、自らがオンラインで予約することはめったにありません。プライバシーやヘルシーなライフスタイルを重視し、かなり前からサステナビリティーやSDGsを理解し、投資をしています。

 顧客のプロファイルは個人、家族、3~4世代のマルチジェネレーション、カップル、会社のCEOやオーナー、個人富裕層、セレブリティー、高品質なものを求める人に分類されます。当社の場合、訪日客の8割は欧州からで、フランス、英国、ドイツに続いてスイスが多いですが、コロナ後はデンマーク、スウェーデン、ベルギーなども増えました。北米も15%あり、メキシコ、ブラジルなど中南米も増加しています。

 予約経路はトラベルコンサルタントからのBtoBが9割以上で、文化体験を求め、アクティビティーでは冒険的なものよりもハイキングやサイクリングのようなソフトアドベンチャーが好まれます。日本の和食は大きな魅力になっていて、アートや建築も需要があり、最近の人は古典や伝統より現代アートに興味を持っています。プライベートな個々のアレンジが大前提で、パッケージされたものを嫌う傾向にあります。

 滞在期間は10日から2週間でしたが、コロナ禍で2~3週間に延びました。平均費用は宿泊、移動の車、体験などコンテンツを合わせて、カップルは300万~500万円、ファミリーは1000万~1500万円。形態はフルオーダーのテーラーメイド個人旅行で、家族は8~10人になることもあり、3~4週間かけて日本中回るリタイアした夫婦も多くいます。

 一方、受ける側のトラベルコンサルタントはトラベルコンシェルジュともいわれ、ハイエンドトラベラーを顧客に持つ専属コーディネーターです。日本ではDMCがオペレーションもしますが、DMCは地域とグローバルマーケットに精通し、専門性をもって、高度な知識と人脈を生かしてアレンジするのが本来の姿です。

 ラグジュアリートラベルにはトラベルコンサルタントやホテル、DMCやデスティネーション、国や各都市の観光局が加盟するコンソーシアムが存在します。規模が大きいのは米国発祥のバーチュオーソ、欧州のセレンディピアン、ホテルやDMCの加盟が多いシグネチャーやアンサンブルもあります。また、グローバルホテルのアソシエーションもあり、最近ではローズウッドが勢力を伸ばしています。目的はトラベルコンサルタントを囲い込み、その中でビジネスを進めるのが狙い。コロナ禍には各コンソーシアムが垣根を越えて、セレクトされた30社によるアライアンスができる動きもありました。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年6月12日号で】

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