20年の国際旅行者10億人減で1988年水準に、今後の回復見通し悪化

2021.02.08 00:00

 世界観光機関(UNWTO)は20年の全世界の国際旅行者数を前年から約10億人減の3億8100万人と推計した。10年以降、リーマンショックから回復し成長を続けてきたが、新型コロナウイルスの世界的流行と国境閉鎖により、1988年の水準まで落ち込んだことになる。観光輸出額は1.3兆ドル減、失業のリスクは1億~ 1.2億人に上る見込み。経済的損失は2兆ドルで世界のGDPの2%相当と試算した。

 UNWTOは昨年5月、通年の国際旅行者数について、58%減、70%減、78%減と3つの回復シナリオを示していた。推計は73.9%減と最低に近い水準。到着地別に見ると、アジア太平洋地域が84.1%減と最大で、日本を含む東アジアが88.1%減と際立った。最大デスティネーションの欧州は70.4%減。夏期に需要回復が見られた西欧は64.0%減にとどまった。

 国際旅行市場の回復見通しは悪化している。UNWTO専門家パネルの調査では、底を打つ時期について回答者の50%が22年と見通し、昨年10月調査時の21%から大幅に増加した。変異した新型コロナウイルスの流行などを受け、年初から入国規制を再び厳格化する動きが広がっていることが背景にある。19年水準への回復は43%が23年、41%が24年以降と回答した。一方で、ワクチン接種が回復を促すとの期待は67%に上った。

 21年は昨年に引き続き国内旅行や近場への旅行が中心となり、自然や地方、持続可能な旅を志向するスロートラベルが高まると予測する。若年層が動き、VFR(友人・親族訪問)やブリージャーが増加する見通し。一方、状況の不安定さを反映し、コロナ下で進行した間際予約傾向が続くと見ている。

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