原優二のコロナ奮闘記vol.13 コロナ禍が始まって5カ月が過ぎた

2020.07.03 12:20

 これは長期戦になるぞと思いつつも、旅行会社のほとんどの人たちが、2月の段階ではGWには戻ると予想していた。それが、3月後半には、GWがだめでも夏は大丈夫だろうとなった。いまから考えると、それは願望に過ぎなかった。しかし、あの段階で、海外観光旅行再開がこんなに難しいと誰が思っただろう。私も5月中旬まで再開の具体的なイメージが持てずにいた。

 4月に入って緊急事態宣言が出されると、今度は自分たちの身を守るために社員の出社を止め臨時休業に入ることになった。休業期間中は海外観光旅行の再開云々を論じるイメージは全くわかず、助成金をいかに受けるかに論点は集中していたように思う。それでも緊急事態宣言中は、日本中みんなが同じ状況だから仕方がないと、あの異常な状態を自らに納得させることもできたが、緊急事態宣言が解かれた後は、取り残された感が強くなった。「酒屋もレストランも営業できるだけいいじゃないか。俺たちはゼロだ」。情けないがそんな思いも抱いた。

 海外観光旅行の扉が固く閉まったまま開かない以上、緊急事態宣言が解かれた後も、そのまま臨時休業を続ける選択をした。今後もこの状態が続けば、雇用調整助成金の特例が使える間は臨時休業を続けることになるだろう。下手に動けば体力を消耗する。ここで体力を消耗すれば長期戦は戦えない。だから夏・秋の海外旅行の販売をストップし、国内旅行も従来の延長線上で行うことにとどめた。これなら、第2波が来ても耐えられる。

 6月になって、ビジネス渡航から海外旅行が再開されることが政府から発表された。ただし、限られたいくつかの国に限定され、PCR検査必須、行動計画書提出など、厳しい条件での再開となる。観光に関しては秋以降ということも明確になってきた。いずれにしても、PCR検査なくして海外観光旅行の扉が開くことはなさそうだ。

 旅行業界も10月の海外観光旅行再開を目指して動き始めた。そのためにはPCR検査の飛躍的な拡大が必要という認識に至り、JATA(日本旅行業協会)も関係各所に働きかけを始めた。グアムでもハワイでもどこでもいいからこの固く閉じた扉を開けてほしい。

 私の思いは、この思いを劇場や映画館、コンサートホール、あらゆる芸術・芸能・文化を担う方々と連携して、市中でワンコインで検査を受けられる検査場を作りたいということにある。なぜなら、この状況にあって旅行業だけが救われるというイメージがどうしてもわかないからだ。社会全体が、ウィズコロナをウィズ検査で経済活動を保証し生き抜くしか方法はないと思う。ここにきて、ようやく少しずつ賛同者が増えてきたと実感している。

 昨日の東京都の感染者は107人。いくら都知事に「感染拡大要警戒」といわれても、一度緩んだタガを締め直すのは難しい。むしろ、長期にわたって経済活動を止めることは不可能。経済活動を止めずに徹底した検査で無症状感染者を隔離し感染拡大を抑え込み、医療体制を大幅に拡充して第2波に備えると言い切ってくれれば、誰もが納得すると思う。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。

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