原優二のコロナ奮闘記vol.18 早ければ来春、遅くてもオリ・パラ後再開に期待し踏ん張ろう

2020.11.07 17:00

 11月6日、ハワイが日本人の観光客受け入れを始めた。ただし、帰国時の14日間の自主隔離は解除されていないので、ハワイ観光旅行再開とは到底いえない。加えて、外務省の危険度も3のままだ。FITで行く分には、2.5万~4.5万円もする高額な陰性証明書代を払い、帰国時の公共交通機関が使えない不便さと14日間の自宅待機を甘受すればOKだが、行ける人はごくわずかだ。

 最近は、観光目的の海外旅行再開は、早くてオリ・パラ後と予想する人が多い。以前は、「夏だろう。いや遅くても秋には」という見方が大半だったが、期待と現実は違った。オリ・パラがある以上、観光目的での海外との往来再開の扉は重いというのが現実だ。

 一方で「19年レベルに戻るのは24年」といったIATA(国際航空運送協会)や航空会社の予測もある。ただ、当社のような中小企業にとっては24年などという予測は意味がない。それどころか、22年春というのですら顔を背けたくなる。オリ・パラ後再開くらいならなんとか我慢できる。しかもそれすら、雇用調整助成金次第である。それがこの業界の現状ではなかろうか。

 現在、JATA(日本旅行業協会)は何とか来春・4月ぐらいには、限定的でもいいからこの重い扉を開けたいと手を尽くしている。鍵は2国間の交渉とインバウンドだろう。私は、菅政権になって潮目が少し変わってきたと感じている。ビジストラックではあるが、入国時のPCR検査や一部ではあっても14日間の自主隔離をなくすなどということは少し前までは考えられなかった。経済界からの強い要請でビジストラックが始まったのだろうが、それ以上のものを感じる。

 周知の通り、菅首相はコロナ禍以前はインバウンド推進の旗振り役だった。故にインバウンド再開への並々ならぬ熱意をお持ちに違いない。少々うがった見方をすれば、GoTo終了時への落ち込みが懸念されているが、代わってインバウンドを再開させたいと考えているのではなかろうか。

 なにも全世界に向けて開く必要はない。韓国、中国が開くだけで十分な効果がある。それに、オリンピック前にある程度の人数をインバウンドで受け入れて、外国人の感染者が出た場合や、外国人のクラスターが発生した場合の対応に慣れておく必要がある。外国人の感染者は必ず出ると考えて態勢を整えないとオリンピックでいきなりでは混乱する。ならば、4月くらいから開ける方がいい。

 雇調金は助成率や単価が下がる可能性もあるが3月まで延長されそうだ。雇調金の特例が継続されるうちは雇用も何とか維持できるだろうがその先は厳しい。本来、雇調金は売り上げが30%ほど落ち込んだが雇調金で休業手当を補填し、売り上げが戻るまで雇用を維持するための制度だ。リーマンショック時は単価は上がらなかったが3年300日になった。3年の間、300日の休業補償をその会社の実情に合わせて自由に使えるという制度だ。

 仮に観光目的の海外旅行が再開しても、売り上げが19年に戻るには何年もかかるだろう。雇調金が3年300日になれば、24年とはいわないが、長期にわたって会社を維持できる道が見えてくる。

 いまほど旅行をしたいという気持ちが醸成されたことはかつてない。「海外旅行が始まったら、絶対またお世話になるから頑張って!」。そう励ましてくれる多くのお客さまに何とか応えたい。それが私たちの大きな力になっていると思う。

原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。

関連キーワード