原優二のコロナ奮闘記vol.7 感染症防止に対応したツアー実施ガイドラインが急務!
2020.05.08 14:50
5月3日、西村経済再生担当相自らが、雇用調整助成金の休業助成日額上限8330円の引き上げ検討に入ったと表明した。待ちに待った引き上げに、つい嬉しくなって全社LINEで社員たちに知らせた。しかし問題は金額である。英国の2500ポンド(約33万円)並みに最低でも月収30万円のレベル、日額1万5000円まで引き上げてもらいたい。中途半端ではせっかく引き上げても批判を浴びる。1万5000円なら誰からも文句は出まい。家賃補助も与党案がまとまり、野党案も出て実現しそうである。
残るは雇用調整助成金の支給限度日数だが、3年300日(1年間での限度なし)を是が非でも実現させたい。リーマンショックの折には、12年10月まで約4年間という長期にわたって3年300日(1年間での限度なし)、助成率中小は5分の4、大手は3分の2が実現している。今回もこのレベルないしはこれ以上の拡大が実現するものと確信している。
さて、長期戦を闘う武器は揃いつつあるが、問題はどうしたら旅行が再開できるかである。緊急事態宣言の出口戦略が大阪モデルなどで具体化する一方で、同宣言終了後も「新しい生活様式」なるものがしばらくは続くらしい。必要なことはわかるが「ここまでやるんですか?」という内容が多い。
横並びで食事し、料理に集中して会話は控えめでといわれたら、居酒屋は営業できるのだろうか。筋トレやヨガは自宅で動画活用でと書かれたら、スポーツジムはオンラインでしか営業できない。旅行に至っては、感染が流行している地域からの移動、同地域への移動ともに控え、帰省や旅行も控えめにし、出張はやむを得ない場合のみ。これで果たしてパッケージツアーなど販売できるのだろうか。
安倍首相は5月4日の会見で、5月を「事態収束のための1カ月であり、次なるステップに向けた準備期間」と位置づけ、本格的な経済再開は6月以降との見方を示唆した。コロナの時代の「新たな日常」を早急に作り出すために、専門家が提案した新たな生活様式を参考に、「さまざまな商店やレストランの営業、文化施設、比較的小規模なイベントの開催などは、人と人との距離をとるなど、感染防止策を十分に講じた上で実施していきたい」と述べ、今後2週間を目途に、事業分野ごとに事業活動を本格化するための感染予防策のガイドラインを策定する方針を示した(旅行通信5月5日号より)。
感染予防策のガイドラインとは、ツアーを実施するためのガイドラインにつながる内容だろうか。当面は国内ツアーが対象になるのだろうが、やるべき感染対策とは具体的に何か。いまJATA(日本旅行業協会)でもこのガイドライン作りを進めていると思うが、必ずクリアすべき最低ラインを決め、ツアー内容によって各社が追加で付与すれば実施できるように進めていただきたい。
そして、次の段階は海外旅行再開である。日本のPCR検査があまりにも少ないので、世界中に疑念が広がっているが、このままでは海外からは無症状の感染者が市中に野放しになっていると思われ、日本人受け入れの端緒が見えない。抗体検査や抗原検査を本格化し、世界の信用を回復させるしかない。健康パスポートや免疫パスポートなどを発行し海外との移動を可能にしようという議論も欧州では始まっている。日本も検討し早期に具体化すべきである。
いったんは収束に向かっても第2波がやって来るという。それに備えて検査・医療体制を拡充し医療崩壊を起こさないようにして、このウイルスと共存してく。それが日本の戦略だろう。穿った見方かもしれないが、私には日本のコロナ対策は集団免疫を獲得することに狙いがあるのではなかろうかと映る。たとえそうでなくとも、この状態では結果としてそうなるのではないか。単にPCR検査態勢が整っていなかったというのではあまりに情けない。厳しくてもいいから、はっきりした戦略を示してほしい。
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原優二●風の旅行社代表取締役社長。1956年生まれ。東京都職員、アクロス・トラベラーズ・ビューローなどを経て、91年に風の旅行社を設立し現職。2012年からJATA理事、16年から旅行産業経営塾塾長を務める。
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