Work & Vacation

2019.09.30 08:00

 今日がこのコラムの締切日なので、ホノルル発成田行きの機内で慌てて書いている。いつも帰りの機内は、仕事する気にはなれずダラダラと過ごしているが今回は違う。この執筆自体が好きなことはもちろんのこと、超大型機A380のフライトが快適なこと、時差ボケ解消アプリのおかげで頭がスッキリしていること、旅先で充実した時間を過ごしたことが決め手だ。

 だが実は現地で別のテーマで書く予定だった。最近結婚したチームメンバーがハワイで式を挙げることがわかり、チーム月1回のアクティビティとして「ハワイでワーケーションしてみよう」ということが勝手に決まっていた。

 チームメンバーたちは数日前に現地入りしていたが、自分だけは仕事があって1人だけ金曜夜の便で駆けつけた。ホノルル行きに1人で搭乗する人はまれで、寂しい人ではないのだと強がるために搭乗口で短パン&サンダル姿に着替えたが逆効果だった気がする。

 最後の仕事で霞ヶ関の某省庁の会議室にいる時に、ビーチサイドでこれみよがしにPC開いて仕事をする写真がLINEで送られてきた。社内稟議の電子申請やメールもどんどんくる。でも「ANAで行く初めてのハワイ」みたいな集合写真もあって、本当にこれをワーケーションと呼べるのかという疑問がどうしても残る。今回はトライアルなので勤務扱いにするが。

 遅ればせながらハワイ入りすると、すでに週末モードのメンバーが空港でピックアップしてくれて、そのまま北に向かった。ハレイワのタートルビーチでたくさんのウミガメに遭遇しながら、フードトラックのガーリックシュリンプを食べて、ワイケレのプレミアムアウトレットで買い物して、ラニカイのビーチを散歩する。「夜は肉だ」と言ってチャックセラーでステーキを食べて、ビーチ沿いのマイタイバーで終了。翌日も教会での結婚式から街中でのパーティーという流れの中で、仕事をするような時間はまったくなかった。

 結局わざわざ持ってきたPCを開いたのは帰りの機内になってしまった。今回は久しぶりのハワイだったので、非日常感が強すぎて、目の前に差し出された魅力的な体験への誘惑に耐えることができなかった。でも実際に動き回ったことで、新しい発見も多くできたし、起業家でもあるUBERドライバーから現地裏情報が聞けたり、会社の同僚や留学中の知人など何人かと偶然に出会ったりすることができた。

 ワーケーションの場所は、たまに行くような異国の地よりは、何度も行っているお気に入りの場所や、自分の心の原風景みたいなところが向いている。日本の地方とりわけ山村や離島がおすすめで、ANAが取り組んでいる多拠点生活やシェアリングエコノミーの推進活動とも相性が良く、地域活性化と働き方改革を一石二鳥で狙える。

 エアラインとして、ワーケーションの浸透に向けた実証実験をしたいが、実施する企業と受け入れる地元との組み合わせが重要となるので、いいパートナーを探していきたい。

津田佳明●ANAホールディングスデジタル・デザイン・ラボ チーフ・ディレクター。1992年に東京大学を卒業後、ANA入社。旅行代理店セールス、販促プロモーション、運賃、路線計画など営業・マーケティング関連業務を担当。2013年よりANAホールディングスへ出向し経営企画課長。16年より現職。19年よりアバター準備室長を兼務。

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