休み方改革を主導しよう、長時間・過重労働の是正へ

2019.05.20 08:00

充実したサービスの提供には観光産業が自らの休み方を改革する必要がある
(C)iStock.com/Oskanov

働き方改革、休み方改革への取り組みが始まり、新たなワークスタイルと旅を連動させた提案が目立ってきた。その一方で、観光産業における改革はむしろ遅れ気味。本来は休み方の手本となってしかるべきだが、果たしてこれでいいのだろうか。

 今年4月から数年をかけて働き方改革関連法が順次施行される。これにより時間外労働の上限規制が導入され、年次有給休暇の確実な取得が求められるなど、日本人の働き方や休み方が変わっていこうとしている。時間外労働、いわゆる残業時間の上限を法律で規制することは、約70年前(1947年)に制定された労働基準法において初めての大改革だ。上限は原則として月45時間・年360時間とされ、法律で1日当たり2時間程度の残業しか認められないことになった。

 今回の改正では、フレックスタイム制のより柔軟な運用や、1日の仕事を終えてから翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間を確保する勤務間インターバル制度の導入に努めることなども求められる。これを受け、ワークライフバランスや生産性の向上を目指し、テレワークやワーケーションといったワークスタイルイノベーションに積極的に取り組む企業も目立つようになってきた。

 観光産業は、人々が休暇や余暇を利用して行う消費行動に支えられている産業であり、休暇取得の拡大や柔軟な働き方の普及による余暇時間の拡大は大いに歓迎すべきことで、大きな商機として捉えることができる。実際にJTBは仕事と休暇を両立させるワーケーションを推進するサービスを開発。4月から提供を開始した。このサービスは、アウトドアオフィス事業を展開するスノーピークビジネスソリューションズと共同開発した「キャンピング・オフィス・ハワイ」。JTBの現地提携ホテルやレストラン、レジャー施設などの空きスペースを使い、スノーピークのフィールドギアや研修プログラムを活用したオフサイトミーテイングの機会を提供するものだ。異空間で仕事をすることで働きがいの向上やアイデアの創出を図る企業の課題解決策として、法人顧客に提案し、21年までに60社に提供する目標を立てている。

 ワーケーションを取り入れた観光事業の可能性は日本航空(JL)グループも注目しており、まずは自社の働き方改革の一環として17年に導入。鹿児島県徳之島町のコワーキングスペースを利用して富士ゼロックス鹿児島とともに行った実証事業では、社員と家族らがワーケーションを実践。商品面では、ジャルパックが和歌山県による親子ワーケーションモニター募集と連動する形で、昨年の夏休みに体験ツアーを販売した。海外旅行に関しても、ハワイでワーキングスペースのあるホテルを用意するなど、ワーケーションのサポートを商品化している。

 このように観光産業にとって新たなビジネスチャンスにつながると期待される働き方改革や休み方改革であり、観光産業は先陣を切って改革をリードすべき立場だ。しかし、実践する企業は一部にとどまり、他産業と比べて改革が遅れていると言わざるを得ない。休暇も満足に取れない長時間労働の職場という評価が定着し、旅行業や宿泊業は就職活動をする学生からも敬遠されがちで、売り手市場の新卒採用では苦戦を強いられている。

 厚生労働省の賃金事情等総合調査(17年)によると、「ホテル・旅行」の平均月間残業時間は産業計の23.5時間を下回る20.7時間と報告されている。ところが、平均所定外賃金は、残業時間がほぼ同じ「パルプ・製紙」(19.8時間)の約半額、3万4600円に過ぎない。さらにいえば平均所定内賃金は調査対象の32業種中で最下位となっている。この統計を見る限り、残業はそれほどではないが低賃金というのが観光産業だ。サンプル数が少ないため実態をそのまま反映していない可能性はあるものの、働き方改革が強く求められる職場であることがうかがえる。

 厚労省の離職率調査でも、新規大卒就職者(15年3月卒業者)の3年以内の離職率は、「その他」を除けば「宿泊業、飲食サービス業」が49.7%でトップ、旅行業が含まれる「生活関連サービス業、娯楽業」が45.0%で第3位と不名誉な結果となっている。同じく高卒者ではそれぞれ1位と2位だ。

ブリージャー容認や一斉休館

 それでも改革の動きも出てきた。サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)によると、19年春季生活闘争で、JTBガイアレックやJTB札幌ビジネスセンターがブリージャー(出張に伴う休日・休暇取得)を可能とすることとなり、JTBパブリッシングやJTBビジネスネットワークは推進する方向で合意。また、KNT-CTホールディングスとKNT-CTウェブトラベルは勤務間インターバルの導入、KNT-CTホールディングスはさらに在宅勤務制度も導入することで合意した。

【続きは週刊トラベルジャーナル19年5月20日号で】