ソフトウエアと旅行業の未来について考えてみた

2019.04.01 08:00

 フィンランド政府の依頼で、ヘルシンキとロバニエミにサプライヤーとの面談に行ってきた。観光業ではデジタル化とプロモーション対応について、国内外問わず行政も本気になり、促進をサポートしている。5社ほどディスカッションした後、まとめのレポートをつくっていて、あることに気づかされた。当初はフィンランド特有の事情や課題が出てくるだろうと思っていたが、なんと懇意にしている国内サプライヤーの皆さまと課題が完全に共通していたのだ。

 なぜそういうことになるのか分析してみたが、理由に気づくまでさほど、時間は必要としなかった。それは、サプライヤーである催行会社自身の目線が、すでにグローバルになっているという証でもあったのだ。お客さまは国内だけではなく、世界中あらゆるところから来てくれる。だから多言語化は必須である。だが、それに対応できるスタッフを擁するにはコストがかかるうえ、教育も考えると即席にはできない。かなりのリソース投資が必要だ。

 さらにもう1つ、重要な発見があった。皆、自社で予約システムを開発すべきか、大手予約エンジン会社のものをレンタルするかで迷っていた。この手の自社開発は100万円単位では無理でどうしても桁が1つ上がってしまう。サプライヤーにとってはかなりの投資になる。それが無駄になるのも困るが、他社大手のものを使ってしまってその会社が将来なくなったり、別の大手の方が強くなったら、これまた無駄になると、そこまで先読みしている。

 問題の背景には、グーグルがまた何をやらかしてくるかわからないということへの懸念が色濃くにじんでいると私は見ている。私の判断はシンプルで、「いまは決めるべきタイミングではない」というものだ。誰が覇者になるかなど、とうていいまの段階ではわからないし、ソフトウエアの覇者など今日の勝者が明日の敗者になるのを過去25年、何度も目の当たりにしてきた。

 ソフトウェアと旅行業の未来を考えるとき、大事なポイントがいくつかある。まず第1に、システムとは所詮道具であるということだ。よく「ITの力ってすごいですね」とか「AIですべて解決していくんでしょう」などと聞かれることが多いのだが、ばかばかしいといつも思ってしまう。もし本当にそうであるなら、「人類など存在する意義、ないでしょう」と問い返したくなる。そうなれば映画「マトリックス」の世界そのものである。だから、道具は道具、使い方次第の話であり、魔法のつえではない。

 第2に、旅行業はいまだサービスの標準化が極めて遅れており、そんな環境でシステム化に過大な期待をするのも、恐怖を抱くのも妄想というしかない。予約というユーザーからしてみたら、旅行のごく一部の断面(瞬間)を見ても、各社いろいろな基準で対応しており、安心などできたものではない。

 つまり予約をお願いしてもいつ確定するかわからないなど、そんなサービスは自分が逆の立場でその言い訳を聞かされて、なるほどと納得できるのか問いたい。「アクティビティーはあれこれ大変」とか「時差がありまして」とか、ユーザーにとっては本当にうんざりなのだ。客は言い訳など聞きたくないのである。

 とはいえ、困っているサプライヤーを放置できない。いま国内で数社、そして今回のフィンランドのサプライヤー数社、つながりのある催行会社については、しっかりとニーズにあわせたアドバイスやサポートをさせていただこうと思っている。残りの人生は人のお役に立ってなんぼ。そう思って生きていこうと決めている。

●荒木篤実●
パクサヴィア創業パートナー。 日産自動車勤務を経て、アラン(現ベルトラ)創業。18年1月から現職。マーケティングとITビジネス のスペシャリスト。ITを駆使し、日本含む世界の地場産業活性化を目指す一実業家。

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