春節商戦の現場ではいま何が起きているのか
2019.03.04 08:00

中華圏全体で数億人が国内外の旅行を楽しむとされる春節の休暇。日本にとっても中国・台湾・香港の中華圏市場は外国人旅行者数の約50%を占める最大マーケットで、春節商戦の結果が注目される。
今年の旧正月を前にした2月4日の大晦日、安倍晋三首相が、ビデオメッセージによる中国人向けの「新年の挨拶」を行った。「皆さん、新年おめでとう」という中国語の呼びかけで始まった挨拶は、日中間の関係改善や日中青少年交流推進年などに触れつつ国民同士の交流の意義を語り、「春節に際して、そして今年1年を通じて、一層多くの中国の皆さまの訪日を歓迎します。(中略)皆さま一人ひとりがそれぞれの日本を発見されることを期待しています」と呼びかけた。日本の首相が春節に際して中国国民に向けてビデオメッセージで呼びかけるのは異例のこと。しかも4日夜には東京タワーをチャイナレッドに照らし出すライトアップも行われた。
これに先立つ2月1日には河野太郎外相が東京で香港のテレビ局のインタビューに応える形で春節の祝賀メッセージを発表。「昨年は中国から830万人以上の方に日本を訪れていただいた。本年もより多くの方に日本を訪問していただき、日本を直接見て、感じてもらえればと思う」と述べている。春節に際して、日本が国を挙げて中国人旅行者に対して歓迎ムードを演出した格好だ。
国の歓迎アピールに力が入るのも無理はない。昨年、日本を訪れた中国、香港、台湾からの旅行者数は合計で約1534万人にも上り訪日市場全体に占めるシェアは49.2%に達している。訪日外国人旅行者の2人に1人が中華圏からの旅行者ということになる。そして彼らが1年で最も活発に旅行へ出かけるのが春節期間であり、日本の状況に例えれば年末年始にゴールデンウィークも加えたような一大旅行週間が中華圏における春節休暇だ。
今年の旧正月の春節(元旦)は2月5日。大晦日に当たる4日から、3が日を挟み週末の日曜(10日)までの7連休というのが一般的だ。週休2日の企業も少なくない台湾では2日(土曜)から10日までの9連休というケースもある。
昨年は2月16日が春節で、休暇は15日から20日の6連休または21日までの7連休だったが、春節休暇のあった2月に中華圏(中国・台湾・香港)からの訪日旅行者数は約130万人となった。
多くの旅行者が大挙してやってくるだけではない。彼らの日本における消費にも期待がかかる。日本百貨店協会によると、全国百貨店における昨年1年間の免税売上累計は一般物品が1887億8000万円(前年比17.9%増)、消耗品が1508億8000万円(同37.2%増)となり免税総売上高は約3396億6000万円で前年と比べ25.8%増となっている。こうした免税売上を支える主要顧客が中華圏からの旅行者だ。免税手続きカウンターの来店国別順位(月別)をみると、中国は12カ月連続でトップで、香港、台湾も月によって順位の変動はあるものの4位より順位が下がったことはない。
1人当たり消費額は伸び悩む
とはいえ今年の春節商戦には懸念材料があったのも事実だ。というのも、「爆買い」に象徴されるように極めて旺盛な消費意欲を示していた中華圏からの旅行者が徐々に消費に関する落ち着きを見せ始めているからだ。それが表れているのが1人当たりの消費額の横ばい、減少傾向だ。訪日外国人消費動向調査によると、中国、台湾、香港からの旅行者の、18年の1人当たり消費額(前年比・2次速報値。ただし10~12月は一次速報値)を3カ月ごとに見ると、中国人旅行者は1~3月4.8%増、4~6月3.8%減、7~9月7.7%減、10~12月3.0%減と芳しくない。台湾や香港は中国よりは上向いているが、暦年ベースの1人当たり消費額(前年比)は中国2.9%減、台湾1.8%増、香港0.9%増で、台湾、香港も微増だ。
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