春節商戦総括 新型コロナウイルス騒動のなかで

2020.03.02 00:00

春節商戦を新型ウイルスが直撃した
(C)iStock.com/Pongasn68

中華圏からの訪日旅行の書き入れ時となる春節休暇。良好な日中関係もあって今年は例年以上に期待が高まった。ところが昨年12月から広がった新型コロナウイルスが春節商戦の後半戦を直撃した。

 毎年、1億人以上の中国人が海外旅行に出かける春節休暇。旧正月の元旦にあたる春節は、毎年、日付が異なるが、今年は1月25日が春節だった。大晦日となる1月24日から30日までの1週間が春節休暇となった。春節休暇は同じ中華圏の香港や台湾からの訪日需要もピークとなる時期だ。

 昨年の春節休暇は2月初旬だったが、2月に日本を訪れた中国からの旅行者数は72万3600人、台湾は39万9800人、香港は17万9300人に達し、2月の訪日外国人旅行者数全体の50%に相当する130万2700人が中華圏3地域からの旅行者だった。

 また昨年は春節が2月初旬だったことから休暇の前倒しにより1月の旅行者も増加し、中国は前年比19.3%増の75万4400人、台湾は10.5%増の38万7500人、香港は3.9%減だったものの15万4300人で、3地域の合計は129万6200人となった。春節がらみの2カ月で中華圏からの訪日旅行者は260万人以上に達したわけだ。政治的に日中友好ムードが出てきた今年は例年以上の期待が寄せられた。

 実際に今年の春節商戦の前半は極めて好調だった。昨年は2月だった春節が今年は1月だったことが、中華圏からの旅行者増加の主要因だが、中国、台湾、香港とも昨年実績を上回った。1月の中国は同月の過去最高を記録。航空便の大幅な増便もあって前年比22.6%増の92万4000人に達した。台湾も過去最高記録を更新。チャーター便による航空座席供給の増大等により19.0%増の46万1200人となった。さらに香港に至っては前年より42.2%も増加。21万9400人で、こちらも1月としての過去最高を記録した。

 ところが思わぬところに伏兵が現れる。昨年12月頃から警戒され始めた新型コロナウイルスの感染拡大だ。春節休暇中の1月27日には、中国政府によって国内・海外の団体旅行やパッケージツアーの禁止措置が取られた。個人旅行は禁止とされてはいないものの、この時点で春節の後半の訪日需要は実質的に大きく影響を受けることになった。

 春節休暇期間の団体旅行・パッケージツアー禁止措置は、春節需要を期待していた日本全国の観光地を直撃した。中国人にも人気の北海道は中国人のインバウンド状況に関する調査を実施。1月14~31日における観光施設等のキャンセル状況(3月末までの予約分)が、宿泊施設(回答約350施設)では1施設平均約420人泊、観光貸切バス(回答約40事業者)約1700台に及んでいることなどが報告された。団体旅行等の禁止が3月末まで続いた場合、影響を受ける団体旅行等の渡航者数は約9万人に達し、少なくとも200億円以上の観光消費が減少すると試算している。

挽回への好材料も多く

 今年の春節商戦の後半戦は新型コロナウイルスに壊滅的な打撃を受けたが、今年後半、あるいは来年の春節に向けて業績挽回への取り組みが求められる。救いは、新型コロナウイルスさえなければ中華圏からの訪日需要には明るい材料が多いことだ。

 台湾は、地方への新規就航やチャーター便就航により航空座席供給が増加し、昨年は春節の前倒し需要で1月に9カ月ぶりに2桁増を記録。反動で2月は伸び悩んだが3月は過去最高記録を更新している。その後、増減を繰り返したが夏以降は成長力が戻り、8月、9月、11月と過去最高を記録した。年間でも過去最高の約489万人を記録した勢いのまま今年の春節旅行シーズンを迎えた。それだけに新型コロナウイルス感染さえなければ、商戦はかつてなく盛り上がったはずだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年3月2日号で】

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