『旅のオチが見つからない おひとりさまのズタボロ世界一周!』 旅人予備軍が増えることを願って
2024.06.10 00:00
しかし円安が止まらない。
大手企業が次々と最高益を叩き出し、政府も日銀も「懸念している」といいつつ、どうやら本気では円安に取り組んでいない。海外旅行のハードル、上がったまま下がらないではないか。
とはいえ、旅に行きたいという潜在需要は体感ではずーっとある。ひとり旅をテーマにした拙著はコロナ禍の間にも版を重ね、たまに依頼される旅セミナーにも多くの参加者がある。行きたいけどいまは様子見、という人がかなりの数いるのだと思う。
今回ご紹介するのは、そんな潜在的な旅人を刺激してくれそうな作品。バックパッカーに憧れ仕事を辞め、20代後半で出た世界一周の旅を生き生きと描いたコミックエッセイだ。
韓国からロシアへ船で渡り、シベリア鉄道7日間。そこからバルト三国や東欧、バルカン半島、トルコなどを旅して空路南米へ。エクアドルからぐるっと大陸を回り込んでブラジルへ――。
ナイス世界一周。
ロシア入管での緊張と不安、旅に慣れたころに見舞われたホテル満室トラブル、人懐っこすぎるトルコ人との交流、各地で遭遇するゆるい働き人たち。
たくさんの未知、たくさんの人と出会いたくましくなっていく著者が小気味いいし、南米自転車旅のキツい道中やモンゴルの星空を眺めながら、ふと人生や旅について思いをはせる感覚は、旅を愛する人なら身に覚えがあるだろう。この旅を契機にすっかり旅人に仕上がった(?)著者、いまも旅費を稼いでは旅に出るという(同志……!)。
元気な旅コミックに触れて「いつか自分も」という旅人予備軍がどんどんと増えますように。かつての現役バックパッカーの業界諸氏も、「あの頃の自分」を思い出しちゃうかもです。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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