『X(旧ツイッター)』 混沌とした状況のその先は
2024.04.08 00:00
イーロン・マスクがツイッターを買収しておよそ1年半がたった。有料会員の募集、閲覧数(インプレッション)に応じて広告収益の一部を分配するなど、収益化を目指しいくつもの改革を行ったが、その結果、どうなったか。
23年は売り上げの大半を占めていた広告収入が大幅減。収益は回復しつつあるとはいうが、それより深刻なのは高まるユーザーの不信感だろう。
収益につながる閲覧数を増やすため、バズった投稿に無意味なリプライをつける通称「インプレゾンビ」が大量発生。過日の能登半島地震では救助要請のコピペ投稿など迷惑なインプレゾンビが多く現れ、もはや情報インフラとしての役割を託せなくなってきた。さらに刺激的な投稿のほうが閲覧を稼げるとあって、近頃はちょっと面白い投稿をするとその拡散スピードも早く、攻撃的なリプライもすぐやってくる。
これに嫌気が差したユーザーが次々とアカウントを消して去っているのだが、さてその行き先がない。最近のインスタグラムは広告が多すぎるし、フェイスブックユーザーは中高年が主体。昔のツイッターみたいと評判の「bluesky」なども大盛況とまではいかない。
そりゃそうだろうなと思う。かつてミクシィユーザーがフェイスブックやツイッターになだれ込んだのは、新しい経験と出会いがあったからだ。「ツイッターみたい」なものをツイッター以外の場所で与えられたとしても、そこに新鮮な感動はない。
手紙、ポケベル、Eメール、SNS。人はコミュニケーションを求める生き物であると同時に、貪欲な好奇心の生き物だ。おそらくそれほど遠くない未来に、また新たなコミュニケーションツールが現れるはず。それはまた、旅や世界の新たな形をつくるかもしれない。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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