『ガザに地下鉄が走る日』 希望こそがいま必要なもの
2023.12.04 00:00
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「1948年『ユダヤ人国家』を標榜するイスラエルの建国に伴う民族浄化によって、パレスチナ人は難民となった」(本文より)
アラブ地域をめぐる西欧列強の綱引き、ナチスによるユダヤ人虐殺などの要因が絡まり合ったパレスチナ問題はまったく出口が見えない。それどころか、10月のハマスによるイスラエル襲撃をきっかけに、ハマスが支配するガザ地区は今度こそ全滅してしまうのではという規模の攻撃を受けている。
2018年に出版された本書は、40年以上パレスチナとともに歩み続けた著者が触れてきたパレスチナやそこに生きる人々の声をつづった一冊だ。
ガザという緩衝地帯(ノーマンズ・ランド)に生きる200万人ものパレスチナ難民(ノーマン)。水は汚染され電力は限られ、栄養カロリーも十分には取れていない。ドローンで24時間監視され断続的に射撃もされるが、イスラエル兵に射殺されれば「殉難者」としてハマスから家族に弔慰金が支払われるので、自ら射殺されに境界に向かう若者もいるという。そんななかにも、日常を楽しもうとする人々がいる。それは一種の抵抗活動でもあるからだ。
ガザは「今や『難民キャンプ』というよりも、むしろ『強制収容所』」と著者は強い言葉で非難する。イスラエルをここに暮らす市民すべての国と定義しよう、という声は国内にも出てきていると聞くが、今回の事件でまた振り出しに戻ってしまったように思う。
本書タイトルの「ガザの地下鉄」とは、14年に著者が目にした架空のガザ地下鉄路線図で、やがてエルサレムにも延伸予定。もちろん夢のまた夢だが、希望は人に生きる力を与える。そして希望こそが、パレスチナに必要なものだと著者は強く訴えかけている。
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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