教育旅行関係者が語る「探究的な学習をどう実現するか」

2023.11.06 00:00

日本修学旅行協会は8月に「これからの教育旅行〜コロナ禍を経て『探究的な学習』をどう実現するか」をテーマに教育旅行シンポジウムを開催した。新学習指導要領で重視される課題設定、情報の収集・分析、問題解決力を身に付ける教育旅行について関係者が議論した。

コーディネーター
竹内秀一氏(日本修学旅行協会理事長)

パネリスト
成清敏治氏(府中市立府中第二中学校校長)
安東峰雄氏(晃華学園中学校高等学校広報部長・宗教科主任)
古賀典明氏(長崎国際観光コンベンション協会事業部部長)
横田裕美氏(JTB企画開発プロデュースセンター)

竹内 修学旅行はコロナ禍を経て、その意義が再評価され、新学習指導要領の軸となる「探究的な学習」の機会を修学旅行に求める学校も増えています。修学旅行で探究的な学習を進めるための効果的な方法やプログラム、修学旅行の方向性や課題を探っていきたい。まず探究的な学習では、生徒が学習課題を設定することになっていますが、どんな課題が出てきましたか。

成清 広島への2泊3日の修学旅行では、こちらから課題として満州事変から復興までキーワードを提示した上で、生徒が興味を持った部分を追求していきました。

安東 訪問地沖縄の空間的な広がりを意識してもらおうと地図を配布し、訪問先を確認させたところ、戦跡が南部に集中しているのはなぜかとか、さとうきび畑が広がるのはどの地域なのだろうとか疑問を抱くようになりました。その結果、ゴミや水の問題、伝統文化の継承の問題にまで興味が広がっていきました。

竹内 学校では探究的な学習をどのようにやっていますか。また、旅行先からどんなサポートがあったらうれしいですか。

成清 事後学習で重きを置いたのは、広島がどんな思いで復興し、被爆2世3世の苦難も含めて自分たちの生き方に何か変化があったのかです。いまはオンラインで受け入れ先と対話交流ができ、そこで頑張る人の暮らしという視点で子供の生き方に影響を与える素材があるといい。学年によってその分野に通じた人がいないことがあるので、受け入れ地でも事前学習の探究課題の例を挙げてもらえるとありがたい。

安東 生徒の新聞離れを意識して、訪問地の地方新聞の記事を廊下に張っています。興味を持つ生徒が多くいて、それが事前学習につながります。当校では修学旅行が4月で卒業まで余裕をもって成果物を作りますが、事後学習のための時間を割いて、修学旅行におけるメタ認知を行うことが肝心です。

竹内 長崎での平和学習プログラムはどんな工夫をしていますか。

古賀 生徒さんが受け身な傾向があり、プロダクトも代わり映えしてこなかったので、積極的にプログラムを提供しています。新しいプログラムを作るにあたり、平和団体やガイドの方たちにも配慮し、いまの平和推進を継承しながら生徒たちの理解を先に進める方向だと説明した上でプログラムを展開しています。

竹内 新しいプログラムを作るとあつれきも生まれそうですが、どう解決していますか。

古賀 きちんと説明すること、皆を巻き込むことです。平和推進に携わる方たちは強い思いで取り組んでいますが、高齢化もあり、違ったアプローチもあることを投げかけ、合意形成しながらやっています。教育界の状況はそれほど理解されていないようで、そこは観光協会が説明すべきところです。去年の長崎はコロナ禍の代替地となり、多くの修学旅行生が来られましたが、オーバーツーリズムと感じる市民もいます。ガイドの数も限られるため1日2回活動する方もいます。来てくれる生徒は未来のお客さまなので、きちんと対応していい思いを持って帰ってもらうようお願いしています。

竹内 旅行会社がつかんでいる学校のニーズは。

横田 学校の修学旅行に対するニーズは、よくお伺いするもので3つあります。多様な生き方や価値観に触れる機会が欲しい、社会課題の解決に向けて実践しているロールモデルに出会わせたい。そして、リアルにその場に行く価値やその場でしかできない体験です。

竹内 プログラム化や新しい企画をするために工夫していることはありますか。

横田 子供たちが学びを得てどうなるのが理想なのか、そのためにはどういった要素が必要かというビジョンを先生方と共有することです。事前・事後学習、旅の効果検証、学校が取り組む探究学習にどう関われば相乗効果が出るか協議して、先生方とチームになることを意識しました。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年11月6日号で】

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