『たもんのインドだもん』 目線が違う人々との交流こそ魅力
2023.09.11 00:00

「え、インドですか……」
次の旅はどこに行くんですか、と聞かれた時、ほかのどこを挙げても「へえ」しか返ってこないのに、インドだけは特別扱いだ。
「人生変わりますか」「呼ばれてる人と呼ばれてない人がいるんでしょ」「怖い」「カレー以外にどんな食べ物が」等々、もはや先進国なのに、未踏の人々にとってはいまだインドは妄想のベールに包まれている。
学校に行かなくなった14歳のころから1年の半分以上を普通にインドで暮らし、普通のインド人と交流してきた著者が、現地の何げない日常をつづったのが今回ご紹介する一冊。画家・装丁家としても知られる著者なだけに、挿画も見事である。
遅刻しても平気な感覚、日本とは違う人混みやパーソナルスペースの取り方、酒や映画との付き合い方。著者の目線で切り取ったエピソードが、じんわりと現地の空気を伝えてくる。
個人的に、(そうそうこれがインド!)と深くうなずいたのは、ご飯とおかずが山盛りになった皿を前に、どれを先に食べればいいのかと迷う著者に家のお母さんが言った言葉。
「あなたのお皿はあなたの宇宙よ。順番なんてない。好きに混ぜ、食べなさい。人生を楽しみなさい」
そうそう。インドでは、その辺の人が急にグローバルかつ哲学的なことを言い出すんである。眺めている景色が違うなあ、なんて思うたび、気持ちがふわっと軽くなる。私にとってもそんな人々との交流が、インドに行く楽しみの1つなんだよなあ。
本書は気鋭の書き手が100ページ前後で気軽に読み切れる作品を寄せた「コーヒーと一冊」シリーズの一冊。移動中の読書にもぴったりだ。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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