『60歳すぎたらひとりを愉しむ100のこと』 ひとり旅への強烈な思いに奮起

2023.08.07 00:00

宝島社刊/759円

 ある日、書店でふと目に留まったのが雑誌『婦人公論』の表紙に躍る特集タイトル、「シニアのひとり旅」入門。シニア向け女性誌が並ぶそのコーナーをよく見ると、他誌でもぽつぽつとひとり旅を取り上げているではないか。20代から飽きもせず旅に明け暮れ、30代でひとり旅活性化委員会を立ち上げ、現在自分が50代。近い年代の旅好き女性が年を取っただけ、という気もしないでもないが、カルチャーセンターでひとり旅講座を行うと、近頃はこの世代が会場を埋めるのも事実だ。

 イマドキのシニア女性はどんな旅を……という好奇心から、雑誌コーナーに並んでいたこのムック本を手に取った。ひとり時間の過ごし方は女性誌で人気のテーマだが、中でも60代が死ぬまでにやってみたい事の1位はひとり旅なんだそう(同誌アンケートより)。

 記事で面白かったのは体験談。「夫や家族がうっとうしい!と感じたときはビジネスホテルに1泊」(62歳)、「みんな体を壊したりして(ハイキングの)メンバーが減ってしまって、最近は私ひとり。若い友達を誘ったこともあるけれど、私とは歩くペースが合わないから申し訳なくて」(64歳)、「(お遍路は)身体は疲れても、心が晴れるんです」(65歳)。本格的な旅をせずとも「早起きしてモーニングを食べあるく」「思い出の町をウォーキング」。

 旅のほかにも推し活や学び直しなど、自分の時間を楽しもうとするシニア女性の工夫は、(先輩方に失礼だけど)いじらしい。ひとりになりたい、自由になりたいという女性たちの思いはいくつになっても同じ、というか上の世代ほど強烈だろう。そんな女性たちの最も願うひとり時間がひとり旅なら、私にも提案できることはありそうだ。頑張って布教していくぞー。

山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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