『栗山ノート』 リーダーが学ぶべき言葉の数々
2023.07.24 00:00
聖人かよ。
一読した後、思わずツッコんでしまったこちらの本。名将といえばいまやこの人という栗山英樹氏のベストセラー。北海道日本ハムファイターズの監督時代、19年に出版された本書は、今年のWBC日本代表の優勝で再びバカ売れしている(と書店のPOPにあった)。
自分にとっては、氏はキャスター時代の印象が強い。前向きな言葉で相手を励ますように会話を進めていく様子が優しい知性派という印象だった。
本書は栗山氏が普段から自分の記録用にしていた野球ノートを編集したもの。といっても野球哲学や分析があるわけではなく、論語や書経など古典、渋沢栄一など実業家の言葉など、ノートを埋め尽くしていた言葉とそれにまつわるエピソードや、言葉から導き出された思考法を解説する形式だ。
「人生をかけて仕事に取り組んでいるのかどうかは、自分ではなく他人が評価するもの/せめて、温かい心の持ち主でいたい」「孔子は万能を人に求めませんでした。だからこそ、ともに助け合うことが必要なのです」(本書より)
とにかく立派なんである。病もあり現役選手として大成できなかった栗山氏は自分の至らなさを自覚し、だからこそ選手やスタッフにどう尽くし、観客にどういう形で感謝を伝えていくかを考え続けている人なのだ。鼻っ柱の強そうな大谷選手がこの人を信頼するのもなるほどなあ、なのだった。
「商売をする上で重要なのは、競争しながらでも道徳を守ることだ」という渋沢栄一の言葉は、近ごろ不正問題で世間を騒がすわが業界も耳が痛いところ。どんな業界でも、常に心を正しくして己の分をわきまえ、周りに、社会に尽くすこと。組織論、リーダー論として学ぶところの多い一冊だ。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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