観光業経営コンサルタントの西川丈次氏が語るコロナで変わるおもてなし

2023.07.10 00:00

おもてなし経営研究所は6月20日、東京国際フォーラムで第20回おもてなしホスピタリティセミナーを開催した。同研究所の西川丈次所長が登壇し、「行動を『考動』に変える!~コロナで変わるおもてなし~」をテーマに、実際に受けたサービスのエピソードを披露した。

 真実のおもてなしとは何かをずっと追い求めてきました。私自身がいち消費者として実際に受けて、素晴らしいと感じたサービスやおもてなしを、こんなサービスをしている人や企業があるという事例だけではなく、なぜそんな行動が取れたのか、その根っこに何があるのかまでをひもときながら話をしたいと思います。

 昨年、羽田空港第3ターミナルそばに日本のエアポートホテルで最大客室数のホテルがオープンしました。オープン数カ月後に行ってびっくりしました。フロントは9台の自動チェックイン機が並ぶだけで、チェックインで戸惑う人をサポートする人が3~4人いました。サービス業界はいま人手不足で、それを賄う機械化が進んでいく未来の姿を垣間見た気がしました。同時にサポートする人がいる価値を、到着あるいは出発する方に提供できているかがサービス業の価値を決めると思いました。人がいる以上、出逢った瞬間にお迎えやお見送りすることが大事なのです。

 飛行機はなぜ飛ぶのか考えたことがありますか。お客さまがいるからです。どんなにおいしい料理を出すレストランでもお客さまがいなければ料理を提供できません。お客さまがいるからビジネスをしていけるのです。オープンやクローズの時間に合わせて来てくださるお客さまに、感謝の想いをもって接客できていますか。そして、それを心の中に置いて仕事をするために、仕事をする目的は何なのかを考えていただきたい。

 仕事の目的が明確になれば、今日の仕事の内容が変わってきます。われわれが仕事をする目的はたったひとつ、創客です。お客さまを創り続けること。私が30数年前に創った造語ですが、創客こそがビジネスの目的です。創客が達成できるから売上利益が伴って企業規模を大きくしていけるのです。お客さまを創り続けることだけを考えてビジネスしていけば、お客さまにどのような対応をしたらいいかおのずと考える環境ができます。

 出逢いの瞬間がなぜ大事なのでしょう。そこからビジネスが始まっていくからです。最初の瞬間を失敗してしまうと、100%お客さまに喜んでいただけるサービスでも、お客さまは80%の価値しか持たないかもしれませんし、50%にも受け止められないかもしれない。でも、最初の瞬間を成功したら100点の仕事を150点にも200点にも感じていただけるかもしれないのです。

 病院で遭遇したことです。雨の中タクシーからつえを突いて降りる方を迎えに出る人がいませんでした。建物に入ってから受付カウンターのスタッフが接客している。これが出逢いの瞬間です。やっている出迎えと、できている出迎えの違いを理解する必要があります。また、ある時、熱があって病院に行きましたが待合室はいっぱいで、立ったまま待ちました。当たり前。どうしようもない。仕方ない。この気持ちをサービス業であるわれわれは壊していかなければなりません。どうすればつらい思い、不快な思いをしているお客さまに対応できるのかを見つけることがビジネスです。

出逢いの瞬間にビジネスが始まる

 私の好きなレストランがあります。出逢いの瞬間をものすごく大事にするところで、暑い日も雪が降る日も365日ビルの外でお客さまを待っています。初めてその店に行った時、タクシーで行きました。降りる時にタクシーのドアを開けてくれたのはレストランのスタッフで、「お待ちしておりました、西川さん」と迎えてくれました。この出逢いの瞬間に成功して、そのバトンをフロアのスタッフに渡す。それによってフロアのスタッフ、シェフの料理など100点の仕事を150点にも200点にも感じてもらえるように、365日お店の外でお客さまを待ち続けるスタッフがいるのです。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年7月10日号で】

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