『RRR』 インドのエンタメシーンが凝縮
2023.02.13 00:00
個人的な好みでインド映画をえこひいき気味に紹介してきた本稿。本作はヒット作だし、わざわざ紹介せずとも……と思っていたのだが、いまや予想を超えるヒットとなっており、いまさらながら取り上げることとした次第。
ド派手なアクションと壮大な物語&セットで注目を集めた『バーフバリ』(15年公開)のS.S. ラージャマウリ監督が手掛けた最新作は、とんでもないハイテンション映画としてまたたく間に世界で評判となり、日本ではインド映画の興行収入を塗り替える大ヒット。今年のゴールデングローブ賞の歌曲賞も受賞する快挙となった。
上映時間3時間を超える大作を「体感3分」と観客が口々に言う本作、とにかく見せ場が多い。英国植民地時代、インド総督に連れ去られた村の少女を取り返そうとする好漢ビームと、これを阻止する使命を帯びた警察官ラーマ。2人の出会い、友情、裏切り、そして共闘という物語はシンプルだが、炎に包まれた少年を救出する出会いの場面から、英国人のパーティーを席巻する高速ダンス、獣たちを引き連れて総督館を襲うビーム、ビームがラーマを肩車するという無茶なスタイルで敵をなぎ倒す2人、神話の神様みたいな服装で2人が戦うクライマックス、などなど。
お前は何を言っているのかとお思いだろうが、ツッコミどころはあっても見せ場が多く考えている暇がない。髭面の男2人の暑苦しい友情と物語の熱量に押し切られて最後まで観てしまう。
英国人がステレオタイプの悪役だし、エンディングは愛国心丸出しの歌詞だし、これが監督の思想なのかインドのいまの傾向なのか考えてしまう部分も多い。だがそれも含めて、いまのインドのエンタメシーンを知るには格好の作品。ともかく面白いっす!
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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