日本クルーズ客船撤退、業界に衝撃 2年間で運航わずか19泊 シニアの手控えも影響

2022.11.14 00:00

「ぱしふぃっく びいなす」はコンセプトのとおり、フレンドリーな乗組員がファンを引き付けた ©篠本秀人

 日本クルーズ客船が来年1月をもって事業を終了することとなり、業界関係者に衝撃を与えている。日本で本格的なクルーズ事業を展開する船社はわずか3社で計3隻。そのうちの一角が姿を消すことになるためだ。クルーズはコロナ禍初期の20年2月末に運航中止に追い込まれ、同年11月に国内クルーズが再開されたものの、度重なる緊急事態宣言で思うように運航ができなかった。主力のシニア層の旅行手控えも大きく影響した。

 1989年の会社設立以来、ダイニングやプール、シアターなどを備えた豪華客船「ぱしふぃっく びいなす」(2万6594トン、238室)を運航してきたが、12月27日~23年1月4日のニューイヤークルーズが最後となる。同社によると、コロナ禍での運航中止から今年3月にまん延防止等重点措置が全面解除されるまでの2年間で実施できたクルーズは8コースのみ。泊数にしてわずか計19泊だった。

 市場の戻りも遅い。同社の顧客は平均65~70歳。「旅行意欲にブレーキがかかる層で慎重。客数はコロナ禍前に遠く及ばない」(営業部企画課)。事業終了は、市場の回復に時間がかかると見たうえで、苦渋の決断だった。会社は今後、解散手続きに入る。

 クルーズ旅行市場はファンなど固定客に支えられてきたが、すでに再開した国内クルーズも回復状況が芳しくない。再興を目指し、JATA(日本旅行業協会)、JOPA(日本外航客船協会)、日本船社が協働で消費者向けキャンペーンを10月から展開中で、日本クルーズ客船も名を連ねていた。

 JOPAの松本隆司常務理事・事務局長は「非常に残念としか言いようがない。長引いたコロナ禍の影響がいま出てきたのではないか」と惜しんだ。

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