『もてなしだけではもう食えない ホテル経営学の本質と実践』 基本原則を小説仕立てでわかりやすく伝授

2022.03.14 00:00

沢柳知彦著/オータパブリケイションズ刊/1980円

 前回ご紹介した『リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法』が面白かったので、今回は日本の宿泊ビジネス本を読んでみた。

 「ホテル開発・投資の現場では、投資家とホテル運営現場で働く方との間に厳然たる知識の格差が存在し、その格差が投資家とオペレーターの利益や賃金になっていると感じていました」(まえがき)と語る筆者は、数々の契約や売却を支援し、現在は立教大学の特任教授というスペシャリストだ。

 以前ツイッターで宿泊関係者が「宿運営に関わる人には、投資目的な人、伝統の継続が目的な人、おもてなしが目的な人がいて、それぞれ危機管理が全然違う」とつぶやいていてうなずいた。投資筋が始めたホテルの中身がスッカスカでコケ気味なのも見てるし、コロナ禍を「おもてなし」一本で乗り切ろうとする宿も見る。お前はどうなのかと詰められると困るのでここは横に置いといて(あれっ)、勉強、勉強。

 内容は小説仕立てで、主人公は池袋西口「ホテルメガロポリス東京」マネジャーの花森心平。ホテル再建を託された彼が大学時代に学んだ観光学の恩師に助言を請い、ホテル経営学のフレームワークを学び、経営再建に取り組むという内容だ。客室在庫の考え方、レベニューマネジメントの基本、顧客アンケートの扱い方、営業予算の使い方、ホテルのリスクとは何かなど、話が具体的で数字が苦手な筆者でもわかりやすくてするする読めるし、大型ホテルの運営とはこうなっているのかー、と初めて知ったことも多かった。

 かわいい女性アシスタントが登場したり、おじさんの好きな企業小説という雰囲気も若干漂いつつ、押しつけがましくなくわかりやすくホテル経営の基本を教えてくれる1冊だ。

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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。

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