SDGs、観光産業の遅れ顕著 ビジネスの効果重視、リソース確保に課題

2021.07.05 00:00

 立教大学観光学部とJTB総合研究所が全国の企業に実施したSDGs(持続可能な開発目標)への取り組み状況調査で、日本の観光産業は他の業種と比べて取り組みが著しく遅れていることがわかった。また、事業者の多くはビジネスにつながることに期待を寄せており、SDGsで先行する企業が従業員の意識やブランド力の向上を重視する現状と大きくかけ離れている。

 調査は840社から回答を得た。このうち観光産業関連企業は旅行会社が162社、宿泊業が30社。業種別で「SDGsに取り組んでいる」との回答が最も高かったのは金融・保険業(85.7%)で、最も低かったのは観光業(20.3%)だった。なかでも旅行業は16.0%とさらに低い。調査ではその要因として、回答した旅行会社の76.5%が従業員10人未満であることから、「SDGsへの取り組みには人材・時間・予算の確保が課題になっている」と推測している。

 SDGsに取り組む効果でも認識の違いが明らか。観光産業は売り上げや収益の増加、取引先の増加への期待が全業種より大幅に高い。支援策でも、補助金、地域との連携、ビジネスマッチングなど、ビジネスに直結するものを求める傾向が強かった。SDGsの認識でも、観光産業は身近な自然環境問題への関心は他業種より高いが、雇用や生産性では低い傾向が見られる。

 この特徴を踏まえ、調査では「観光産業での推進には、社会奉仕的なことにとどまらず、ビジネスとして取り組むための道筋を示すことが重要」と指摘。また、今後の旅行市場の中核となるZ世代が社会問題に積極的なため、「中長期的な視点で取り組むことで働きがいや生産性を高めながらビジネスとしての効果も上げていければ、産業の魅力が高まる」との見解を示した。

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