コロナ危機下の知恵 観光・旅行サービスのひと工夫

2020.06.08 00:00

ステイホームの生活者が楽しめるサービスが続々と誕生した
(C)iStock.com/kyoshino

新型コロナウイルスの感染拡大により、人々は移動の自由も旅の楽しみも奪われてしまった。そんな状況のもとで旅行業界にできることは何か。旅行業界ではBtoBのオンラインセミナーが行われる一方、生活者向けの観光・旅行系オンラインサービスも増えている。

 毎年3月開催のITBベルリンは、世界中の旅行・観光関係者が集う世界最大規模の国際旅行見本市だ。新型コロナウイルスの影響で今年は開催中止となり、中止決定が開幕間際だったこともあって多くの業界関係者が途方に暮れることになった。しかし代替策の取り組みは早かった。すぐにオンラインプラットフォーム「itb.com」を立ち上げ、バーチャルコンベンションを実現。ゲストスピーカーの講演や専門家によるセッションをオンデマンドで視聴できるサービスやデジタルネットワーキングの環境を整備した。もちろん対面だからこそもたらされる価値もあり、ITBバーチャルコンベンションが全面的に成功したわけではないようだ。それでもオンライン対応への切り替えの速さは注目に値する。

 人の移動が制限される以上、さまざまな分野でオンライン化が進むのは必然で、実際にオンラインへの切り替えが始まっている。レジャー・娯楽分野では、オンライン飲み会、オンライン落語会やオンラインスナックなどまで数多く、すでにオンラインスナック横丁なるバーチャル空間まで登場している。イベント分野でもオンラインウエディングやオンラインお見合いからオンライン葬儀などまで事例はさまざまだ。もちろん観光・旅行分野でもBtoB、BtoCを問わず、取り組みが始まっている。

 BtoBに関しては観光局がオンラインセミナーを実施している。タイ国政府観光庁は5月中に、新入社員などタイ初心者を対象とする観光基礎情報のオンラインセミナーを6回、タイ商品の企画・販売担当者を対象にタイの現地最新情報をアップデートするオンラインセミナーを2回、各定員100人で開催した。セミナーはオンライン会議システムのZoomを利用して実施され、観光局側からの情報提供だけでなく、参加者から質問も受ける双方向スタイルをとった。

 観光局以外でもJATA(日本旅行業協会)がオンラインセミナーに取り組んでおり、4月下旬には「新型コロナウイルスと日本の観光産業」をテーマに2部構成で2日に分けて実施した。JATAアウトバウンド促進協議会も4月中旬にオンラインセミナーとして「ミレニアル世代女性へのアプローチ」を実施済みだ。

自宅にいながら擬似体験

 ただ、観光局のオンラインの取り組みで圧倒的に多いのは生活者を対象とするBtoCのプログラムだ。ハワイ州観光局(HTJ)は「おうちでハワイ」と題して自宅でハワイを体感できるオンラインプログラムを用意した。プログラムは7つのカテゴリーで構成され、たとえば「バーチャルハワイ」のカテゴリーでは、動画や写真を使ってハワイのアトラクションやドライブ、街歩き、自然散策、海中散歩などを疑似体験できる。

 オーストラリア・ビクトリア州政府観光局の「バーチャル体験fromメルボルン」は、メルボルンの観光の魅力をホームページで紹介する。各観光施設や観光スポットが提供する各種オンラインプログラムをリンク。メルボルン動物園やフィリップ島のペンギンパレードの現場からライブストリーミングで動物の様子が観察できたり、ビクトリア国立美術館の作品がライブで観賞できる。

 英国政府観光庁は同庁サイトで「Discover Great Britain from home」コーナーを設け、英国映画やテレビシリーズの最新情報、人気英国バンドを集めたプレイリスト、英国有数のレストランが伝授するレシピ、英国を旅するヒントや雑学などを配信する。また、ブランドUSAは自宅に居ながらアメリカ旅行の動画コンテンツを楽しめる「GoUSA TV」を運営している。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年6月8日号で】