羽田増枠のインパクト 旅客の動線変化を探る

2020.03.30 00:00

期待にあふれた羽田国際線の増枠だったが新型コロナウイルスの影響で視界不良に
(C)iStock.com/PW-Mizu

羽田空港の国際線発着枠が大幅に増加する。東京五輪開催を契機とする訪日外国人旅行者の受け入れ拡大などが目的で、増加幅は年間で約3.9万回。羽田発着の新規路線が増す一方で、成田空港の位置づけには変化がみられそうだ。

 東京五輪開催に向け羽田空港の発着枠を拡大するため、米軍横田基地の航空管制空域を利用していくことで日米政府が合意。夏期スケジュールの始まる3月29日から、羽田の昼間時間帯の国際線発着枠が拡大される。国際線発着枠(昼間時間帯)はこれまでの約6万回から約3.9万回増えて9.9万回に達する。割合にして65%増という大幅な拡大だ。便数でみると、羽田昼間時間帯の運航便数はこれまで1日当たり80便だったが、夏期スケジュールから130便となる。

 五輪年である20年に訪日外国人4000万人を誘致する政府目標の実現は絶望的な状況だ。それでも訪日外国人需要の取り込みを少しでも増やしたい政府にとって羽田国際線発着枠の拡大はインバウンド牽引の柱となる主要政策の1つ。国土交通省では羽田の発着枠拡大だけでなく、成田空港についても管制機能高度化や高速離脱誘導路整備が行われることで夏スケジュールから空港処理能力が年間4万回増加することや、那覇空港も滑走路増設により発着容量が年間10.5万回拡大することも合わせ、「空港機能強化の取り組みにより、空港処理容量としては訪日外国人旅行者の年間600万人相当の増加に対応できる環境が整う」(赤羽一嘉国交相)としている。

北米路線に手厚く配分

 国際線の増加50便分の発着枠は9カ国・地域の路線に配分された。これまで羽田からは14カ国・地域の23都市に路線が展開されていたが、今回の増枠でこれまで運航されていなかったロシア、インド、イタリア、トルコ、フィンランド、スカンジナビア(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー)の6カ国・地域への路線が新たに運航されることになった。

 増枠となった9カ国・地域のうち最も多く配分されたのが米国で24便。次いで中国の8便だ。すでに昼間発着枠が存在する両国だが、航空会社にとって増枠は願ってもないチャンス。ビジネス旅客需要が安定的に多い両国の航空市場にとって、都心へのアクセスが良い羽田利用のニーズは大きい。羽田昼間時間帯の発着枠での運航は高収益が期待され、金の生る木だ。

 初めて昼間時間帯の発着枠を確保したロシア、イタリア、トルコ、フィンランド、インド、スカンジナビアのビジネス旅客の動きにも大きな影響を与える。オーストラリアは深夜早朝時間帯の運航便はあったが、昼間時間帯の発着枠が確保され日豪双方の需要開拓に弾みがつきそうだ。

 羽田発着枠は需要の見込みも立ちやすいため、配分を受けた航空会社は新規路線でも積極的にトライできる。これまでに明らかになった各社の増枠分の使い道を見ると、大半が新規路線に充てられ、増便分に使われるのは50便分のうち8便。増便路線にはニューヨークやロサンゼルス、ホノルル、北京、上海、シドニーといった繁忙路線が並ぶ。

 北米路線は10便が一気に34便に増える。米国側に配分された12便のうち、最多5便を得たデルタ航空(DL)はシアトル、デトロイト、アトランタ、ポートランド、ホノルル線を新設。すでにあったミネアポリスとロサンゼルス線を合わせると羽田から7都市へ直行便を運航することになり、米国航空会社としては羽田最大の運航便数を誇ることになった。これを機にDLは全便を羽田発着に変更する。ユナイテッド航空(UA)は4枠を得て羽田からニューアーク、シカゴ、ワシントン、ロサンゼルス線に就航し、ニューアークとロサンゼルスについては成田便も残す。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年3月30日号で】