『望郷太郎』 人類の歴史たどる旅のスケールに期待
2020.02.17 00:00
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本稿執筆のタイミングで、新型コロナウイルスの感染拡大が騒がれている。どうしたってSARSの騒動を連想してしまうが、あのときの教訓が生かされていることを祈るばかりだ。
でも、あのときに比べたら人類の移動速度や移動人数は桁違いだし、今回収まったとしても、パンデミックによる人類のピンチ、あるいは気候変動による地球のリセットとかありえるよなあ。なーんて、日々のニュースを見つつ壮大な心配をしたりもする昨今だ。
というわけで、今回ご紹介するのは、人類壊滅後の世界を描いたコミック。SFでは使い古されたテーマだが、作者が山田芳裕となると見逃せない。前作で数奇に生きた戦国武将の古田織部の生涯を描いた『へうげもの』は生きる意味を問うた傑作だった。
主人公の舞鶴太郎が人工冬眠から目覚めると、そこは500年後の世界だった。大手企業のイラク支社長だった太郎は大寒波から一時避難するため、妻子とともに人工冬眠機に入ったのだが、妻子が入った機械は200年以上前に通電を停止。そこにはミイラ化した遺体があるだけだ。外に出ても人っ子一人おらず、太郎は自分が人類の生き残りと知る。どうせ死ぬなら日本で、と彼はイラクのバスラから日本を目指し一人歩き出す。絶望と出会いの果てに、彼を待ち受けるものはなにか。
うーむ、この話がどこに行くのかよくわからないが、人の生きる意味、人類の歴史をたどろうとしているらしき雰囲気である。いずれにしても『へうげもの』が規格外のスケールだっただけに、単なるロードムービー的な展開にはならないのは予想がつく。旅好きとしては、バスラからカスピ海に向けて北上し、シベリア鉄道経由で日本へ……という予定ルートにも興味津々。目が離せない、楽しみな作品だ。
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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