障害者の背中押すツアー拡大 着座型スキーからオストメイト対応まで

2020.01.20 00:00

ジャルパックが目玉に据えた着座式スキー。重度の障害がある人でもいすに座れれば体験できる

 障害があっても旅行を諦めないでほしいと、個別の課題解消を図る工夫を講じたツアーが増えている。近畿日本ツーリスト首都圏(KNT首都圏)は昨年12月、オストメイトを対象に木更津への温泉ツアーを実施したほか、ジャルパックは3月に着座式スキー体験を目玉に据えた北海道ツアーを予定する。文字どおり、誰もが楽しめるユニバーサルツーリズムの環境づくりが進みつつある。

 KNT首都圏は医療機器開発のアルケアとの連携により実施した。ストーマ(人工肛門・膀胱)を装着しているオストメイトは、排泄物の臭いもれに不安を感じたり、周囲の目を気にする人が多い。そこで、宿泊先の龍宮城スパホテル三日月の協力を得て専用の着替えスペースを用意するなど、気兼ねなく温泉を楽しめるようにした。アルケアのストーマ装具製造工場訪問といった要素も盛り込んだ。アンケート調査では、旅行や温泉への自信が高まったと回答した人が89%に上った。

 ジャルパックのツアーは昨年に続いて2度目。着座式スキーは、バリアフリー環境が整っていない場所でも、専用の機材やスタッフの技術を用いて個々の状況に適応したアクティビティーを提供するアダプテッドツーリズムの一環。日本航空出身の中岡亜希氏が提唱する概念で、同氏らの協力を得てツアーに仕立てた。昨年は16人程度が参加し、手ごたえを得ていた。

 着座式スキーの活用は地域にも活路をもたらしている。長野県は山岳エリアという特徴を逆手に取り、中岡氏と協働するインクルーシブ野外教育研究所との連携の下、教育旅行での利用を推進。リゾート施設がアクティビティーとして導入するなど、広がりを見せている。