ゴミ問題と五輪と明日の日本
2020.01.20 08:00
日曜日、千葉県一宮町の海外で行われた早朝ビーチ清掃ウオーキング大会に参加した。開始直後は雨だった。波も少し荒れていた。それでも、雨がっぱを着た子供たちや保護者・ご年配の方々数十人が参加した。ウオーキングを始めたら不思議なことに雨が上がった。ゴミを拾いながらビーチを歩いた。子供たちはまるで楽しいゲームのように熱心にゴミを集めていた。私自身いつの間にか夢中になった。ゴール地点では、ゴミが山のように集められていた。
日本インバウンド連合会はこの日、地元の一宮町との共催で、大会の後、トークショーを開いた。来る7月26~29日に一宮釣ヶ崎海岸で東京2020五輪競技大会のサーフィン競技が行われるからで、そのレガシー(未来へ残す遺産)創りの支援であった。五輪のサーフィン競技会そのものはわずか4日間。さまざまな特需は生まれるだろう。しかし、然るべき準備をしなければ、望むレガシーは生まれない。そのレガシーを地元の皆さんと創るためにこそ、今回の共同企画を提案した。
テーマは「町民と考える2020の一宮町・外房地域のみらい!」とした。地元のサーフィン選手や町長、地元の訪日旅行関係者や地元選出の国会議員、地球環境問題に取り組むミス・アース・ジャパンの東京大会グランプリ受賞者などにご登壇いただいた。短時間の会だったが、会場は熱気に包まれた。
私は世界各地から五輪選手が集まる今回のサーフィン競技会は、一宮町のみならず外房地域全体の大チャンスであり、インバウンドへの地域連携に基づく戦略的な取り組みが不可欠で、シビック・プライド(地元の人々の当事者意識)が重要とする自説を語り、他の登壇者の方々の話にも耳を傾けた。トークショー後は地元の聴講参加者とも意見交換でき、とても刺激的かつ有意義な時間を過ごせた。
ただ、この日一番痛感したこと、いや学んだことはインバウンド振興にかかわることではなかった。地域の環境保全の重要性である。秋に千葉をはじめ日本列島を襲った台風と大雨の影響もあり、清掃ウオーキング時にはその災害ゴミ他が海岸に大量に漂着していた。拾っても拾いきれないゴミがビーチに打ち上げられていた。
一宮海岸はウミガメの産卵地でもある。ウオーキングの途中で地元の方から、「透明のビニール袋が一番危険です。必ず拾ってください。ウミガメがクラゲと間違えて飲み込み、死んでしまいます」という注意を聞いた。恐ろしいことだ。ペットボトルのふた、ストロー、マイクロプラスチックなど、どれほど波にもまれても分解しない(腐らない)石油化学製品の始末の悪さをあらためて痛感した。頭でわかっているつもりであったことが今回骨身にしみた。
思い起こせば、秋に訪問したマニラでは、生分解性のものや紙のストロー以外は法律で禁止されていた。福井のシンポジウムでは、ドイツ出身のスベン・パリス氏が「禅の修行の場である永平寺大伽藍の玄関で、見学する人々の靴入れ用ポリ袋を渡されてがっかりした」という話をしていた。日本は取り残されているが、欧米豪州をはじめ、今や世界中で地球に負荷を与えるツーリズムは否定され始めている。
夏の五輪開催に向けて、今われわれが第一に取り組むべきは、3Rのうちのリユース(再利用)、リサイクル(再資源化への取り組み)強化はもちろんだが、その前に何よりもリデュース(無駄な消費削減)にあることを、あらためて強く思った。そして、五輪のレガシー創出に向けて、環境保護意識の覚醒を促していくための貢献を密かにわが心に誓った。
中村好明●日本インバウンド連合会理事長。1963年生まれ。ドン・キホーテ(現PPIHグループ)入社後、分社独立し、ジャパンインバウンドソリューションズ社長に就任。官民のインバウンド振興支援に従事。ハリウッド大学大学院客員教授、国際22世紀みらい会議議長、全国免税店協会副会長。
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