『死んだら飛べる』 空の旅のお供に極上ホラーを
2019.11.11 00:00
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個人的な感覚だけれども、旅行業界に関わる人は、飛行機大好き!というタイプと、飛行機怖い!というタイプと両極端に分かれるような気がする。業界関係者は飛行機に乗る機会が多いぶん、飛行機の怖さも知っていて、結果苦手になったりもするようだ。
「たったいま、いいことを思いついた。/空を飛んでいるとき、人の身に起こりうる、あらゆる災難にまつわる小説のアンソロジーだ」(あとがきより)。このセリフの主が当代きってのホラー作家、スティーブン・キングなのだから、もう読む前から怖いこと間違いなしの短編集である。ちなみにスティーブン・キングは自身も認める怖がりで、だからこそ恐怖小説が得意なのだという。飛行機苦手な私も怖いもの見たさで、ついつい本書を手にして……面白くて震え上がった次第です。
窓から見える謎の生き物と1人で対決するはめになった乗客の話『高度二万フィートの悪夢』、ゾンビに支配された世界から飛行機で脱出しようとする『機上のゾンビ』、57秒だけ時間を戻せる不思議な指輪を手にした男が飛行機事故に遭遇する『ルシファー!』、幻の民族の儀式用仮面を密輸しようと飛行機に乗り込んだ男の顛末『仮面の悪魔』、飛行機のトイレ内での密室殺人『プライベートな殺人』……。どれも怖そうでしょう(マジ怖いです)。特に気に入ったのは、飛行中に世界大戦が勃発してしまった乗客・乗務員たちの姿を詩情豊かに描いた『解放』だ。核爆弾やミサイルは空からはそう見えるのか、という好奇心も満足させられる。
空の旅や飛行機の舞台裏をよく知る皆さまなら、普通の読者よりずっと怖くて面白いはず。次の空の旅のお供にいかがですかな?リアルさがプラスされますよ(怖くてトイレに行けなくなったらごめんなさい)。
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山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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