『脱・筋トレ思考』 リーダーに指導のあり方説く
2019.09.30 01:00
「現代スポーツには勝利至上主義や商業主義、過度な競争主義がはびこっている。勝利、カネ、ランキング上位といった、目に見えてわかりやすい目的を掲げ、それに向けてシンプルな方法で解決を図る考え方を、本書では『筋トレ主義』と呼ぶ」(まえがきより)
元ラグビー日本代表でスポーツ教育学教授でもある著者は、この単純思考がスポーツ界のみならず社会にも広がっている、と語る。勝利至上主義、教育現場での成績至上主義、会社での成果史上主義……。これを乗り越えるために何をすべきか、そもそも筋トレ主義の何がいけないのか、そこを突き詰めて考えたのが本書である。
スポーツとも筋トレともあんまり縁のない生活をしている筆者だが、この考察はなかなか面白かった。
NHKのミニ番組「みんなの筋肉体操」が大人気だったり、昨今は筋トレがブームになっている。だが著者の経験では、筋肉を増強したからといってパワーアップするとは限らず、むしろ重いと感じることもあるという。必要なのは鍛えた筋肉を自在に動かすバランスのいいしなやかな身体。そして指導者が教えるべきは必要なコツや勘の養い方だ。それを根性論やイメージでなく、言語化して伝えていくのが指導者の役割、と著者は語る。
なるほどなあ、って感じである。ちょっと難しい専門用語も混じるが、実在のスポーツ選手を例に挙げながらじっくり思考を深めていく書き方は読みやすくわかりやすい。
日本人がともすれば陥りがちな「頑張る人ほど偉い」「ダメなやつは努力が足りない」「背中を見て覚えろ」的な根性論にNOを突きつける、新しい時代の教育論としても読める。スポーツ関係者に限らず、すべてのリーダー、教育担当者にもおすすめしたい1冊。
山田静●女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『決定版女ひとり旅読本』『女子バンコク』(双葉社)など企画編集多数。最新刊に『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)。京都の小さな旅館「京町家 楽遊 堀川五条」「京町家 楽遊 仏光寺東町」の運営も担当。
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