全国の商工会議所アンケートでわかった観光振興の取り組み実態
2019.01.28 08:00
急成長するインバウンド市場に対する取り組みが、着実に全国に広がりつつある――。先ごろ公表された、全国各地の商工会議所対象の観光振興に関する調査結果からはそんな現状が見えてきた。一方で、二次交通の確保や多様な決済方法への対応など、具体的な課題の存在も見て取れる。
昨年11月の「全国商工会議所観光振興大会2018 in 会津若松」の開催に合わせて公表された「地域および商工会議所における観光振興の現状に関する調査結果」は、日本商工会議所が全国515商工会議所を対象に毎年アンケート調査しているもの。今回は18年8月に調査を実施し448商工会議所から回答があり、回答率は87.0%だった。
調査結果を見ると、観光振興への取り組みの中でもインバウンドへの取り組みが全体的に強化されており、インバウンド市場の拡大を受けて全国の商工会議所における訪日外国人の旅行需要取り込みへの動きが活発化していることがうかがえる。
地域におけるインバウンド拡大への取り組みについて「積極的に取り組んでいる」「まあまあ取り組んでいる」と回答した商工会議所は53.1%(238カ所)で5割を超えた。前回調査では回答のあった所)で515商工会議所中の250カ所で比率は48.5%。今回初めて5割を超えた。前回と今回では回答した商工会議所数が異なるため、“初の5割超え”を単純に比較できないが、全国の商工会議所におけるインバウンドへの取り組み意欲は、増すことこそあれ減じていることはなさそうだ。
また、「あまり積極的に取り組んでいない」「ほとんど取り組んでいない」と回答した205カ所に今後の取り組みについて聞いたところ、46.4%(95カ所)の商工会議所が「積極的に取り組むことにしている」「取り組む方向で検討している」と回答。取り組みの成果に関しては「受け入れ意識の変化」 が最多の71件となった。
訪日教育旅行の受け入れは2割に
今回の調査は基本的事項を尋ねた前回までとは内容を変え、取り組み内容についてはより具体的に地域が直面する観光振興の課題も尋ねた。
インバウンドに関しては、訪日教育旅行の受け入れに関しても尋ねている。訪日教育旅行の受け入れは、インバウンド拡大の有効な手段として期待され、国も現在受け入れる4万人を20年までに6万人に増やす目標を掲げるなど重要な取り組みだ。しかし、77.7%(348カ所)の地域が「受け入れていない」「わからない、知らない」と回答。「受け入れている」との回答は22.3%(100カ所)にとどまる。
受け入れ主体は自治体が最も多く53件、次いで学校27件、教育委員会15件、DMO7件、NPO7件で商工会議所が受け入れ主体になるケースも5件あった。派遣元を国・地域別に見ると多い順に、台湾(55件)、中国(33件)、その他アジア(16件)、北中米(16件)、韓国(14件)と続く(複数回答)。
また受け入れ経験のある商工会議所から寄せられたコメントの中には、「派遣元からの急な依頼やキャンセルが多い」「(急な依頼により)国・地域によってはビザ発給が間に合わず訪日できない学生がいる」といったものもあり、海外との習慣や感覚の違いに戸惑う様子もうかがえる。
自然災害の多い日本で欠かせない危機対応でも、外国人対応が手薄なのが実情。理由を尋ねたところ「インバウンドがいない(来ない)・少ないため、必要性を感じない」が36.8%(165カ所)。他に「インバウンドの対応まで手がまわらない」が21.4%(96カ所)、「危機管理体制を整える自治体の対応が遅れている」が14.3%(64カ所)となっている。
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