没入型体験 イマーシブが変えるコト消費

2024.05.20 00:00

(C)iStock.com/SergeyNivens

没入型のエンターテインメントが人気だ。名画の作品世界に入り込む疑似体験ができる展覧会が数百万人を動員し、飲食中にミステリー劇が始まって客が登場人物として巻き込まれるレストランが人気を博す。3月には世界初の没入型テーマパークも開園した。ツーリズム産業はこの潮流をどのように取り込んでいけばいいのか。

 エンターテインメント業界では没入型の体験プログラムやイベントに大きな注目が集まる。英語で没入型を意味するimmersiveから、イマーシブエンターテインメントともいわれる。先駆けとなったのは日本のアート集団チームラボがデジタルテクノロジーを駆使して実現した没入型のアートエンターテインメントだ。

 東京・お台場で22年まで営業していたチームラボボーダレスは18年の開館からの1年間で、世界100カ国以上から訪れた外国人観光客を含む約125万人を動員。19年には年間219万人以上が来館し、単独のアーティストのミュージアムとしてはアムステルダムのゴッホ美術館を抜いて世界最多となりギネス世界記録に認定された。チームラボボーダレスから1カ月遅れで開館し27年末まで営業する豊洲のチームラボプラネッツとの2館合計では、18年の開業後1年間で350万人という動員力を見せつけた。

 この分野の注目度は世界的に年々高まり、新たなイマーシブエンターテインメントが登場しつつある。オーストラリアの企画会社グランデ・エクスペリエンセズが創る没入型展覧会ゴッホ・アライブは世界99都市を巡回し900万人以上を動員しており、100都市目として1~3月に東京でゴッホ・アライブ東京展を開催。40台の高精細プロジェクターが映し出す映像と高品質のサラウンド音響を駆使して絵画を五感で感じられる時間を提供した。同社はこの技術を使い世界中で各種展示会や没入型体験を提供しており、世界180都市で250回以上のイベントを実施し2300万人以上を楽しませている。

世界初のテーマパーク

 3月には世界初のイマーシブテーマパークをうたうイマーシブ・フォート東京がオープンした。東京・お台場の旧ビーナスフォート跡地を利用して造られた約3万㎡の屋内型テーマパークだ。館内全体を使って繰り広げられるアトラクション「フォルテヴィータ事件簿」では、架空の町フォルテヴィータを舞台にプロの俳優たちが演じる個性豊かな15人の登場人物が大騒動を巻き起こす。

 観客と演者の境界線がなく、すぐ隣で衝撃的なアクションシーンが展開されたり、客が事件に巻き込まれたりする。このほか人気漫画・アニメ「東京リベンジャーズ」をモチーフにした謎解き型イマーシブシアター体験「イマーシブ・エスケープ」などのプログラムも用意される。

 チームラボは2月、昨年11月開業の麻布台ヒルズにチームラボ・ボーダレスをオープン。日本未公開を含む実験的作品を多く展示している。テーマごとに空間を区切ってはいるが個々の作品同士の境界はなく、「境界なく連続する1つの世界の中で、さまよい、探索し、発見する」体験に没入できる。来場者の振る舞いによってインタラクティブに反応するチームラボならではの作品群が、来場者の没入感を一層高める。

 昨年末から5月まで所沢市の角川武蔵野ミュージアムで開催されているのが没入型展示会「サルバトール・ダリ-エンドレス・エニグマ永遠の謎」だ。幻想的で非現実的な作風で知られるダリの不思議な作品世界に没入できる展示会で、日本では初開催だが世界では200万人を動員した。1100㎡以上の第1会場では巨大空間が映像と音楽で包み込まれる。ダリの名作や記録写真が360度のスクリーンに投影され、作品の世界観を全身で感じることが可能だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル24年5月20日号で】

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