MICE再起動への布石 熾烈な競争を勝ち抜く体制づくり

2023.03.27 00:00

(C)iStock.com/Brankospejs

世界的な人流の再拡大に伴い、国際会議などMICE誘致に向けた熾烈な競争が始まっている。日本でも東京や大阪といった大都市が誘致を強化する戦略を打ち出した。一方で国は、MICE誘致を重点目標に位置付けるものの、強力な戦略と推進体制がまだ見えてこない。

 観光立国推進基本計画の4回目の改定に向けた計画案が発表された。その中でMICEに関しては、経済効果が大きくビジネス機会やイノベーションにつながり、国・開催地のブランド力向上や旅行需要の平準化にも寄与する意義を挙げたうえで、政府一体となったMICE誘致・開催の支援をうたう。新たな基本計画は25年までの目標と進め方を定めるもの。大阪・関西万博が開催される機会を捉え、「アジア最有力MICEデスティネーションとしてのイメージを世界的に構築」するとしている。コロナ禍によって振り出しに戻った国際会議の開催件数目標は、アジア主要国で最大の開催国・シェア3割以上。19年の開催件数はアジア2位で、アジアの上位5カ国・地域(日本・中国・韓国・オーストラリア・台湾)に占める開催件数シェアは30.1%だった。25年にはこれを上回るアジア最大のMICEデスティネーションを目指すことになる。

 初年度のスタートダッシュは可能なのか。観光庁の23年度予算額を見ると、MICE誘致の促進に割かれる予算は2億1300万円で、前年度比15%減。MICE開催支援や誘致プロモーションなど金額が大きい事業は日本政府観光局(JNTO)が実施し、JNTO運営費交付金(123億5600万円)の中から予算を拠出するが、どの程度がMICEに割かれるかは不透明だ。22年度第2次補正予算からも4億円を拠出予定だが、それでも十分とは言い難い。

41億円超費やす東京都

 これに比べ、23年度予算額を大幅に増やして誘致推進に乗り出したのが東京都だ。MICE誘致に積極的な大都市の中でも力の入れ方が抜きん出ている。

 コロナ禍の鎮静化を待って東京都が1月に発表した新たなMICE誘致戦略では、都内での国際会議開催件数を30年に世界3位以内に引き上げる目標を掲げた。19年は世界10位で、7位のシンガポールの後塵を拝しアジア2位となっている。世界3位以内を目指すとなれば、アジアでは頭一つ抜けるほどの実績が必要で、国が掲げる「アジア最大の開催国」という国単位の目標を軽々と超えなければならない。日本のMICEは東京がけん引するという意気込みが感じられる目標設定だ。

 東京都はこれまでもMICE誘致には並々ならぬ力を注いでおり、予算額は19年度18億3000万円、20年度29億8800万円、21年度23億7900万円、22年度37億円と、コロナ渦中を通じても21年度を除けば増額傾向を貫いている。さらに、世界的な人流の回復が見込める23年度予算では、前年度を約12%上回る41億6000万円余りを計上した。

 これほどの予算を投じる理由について、都は「コロナ禍の影響で経済が停滞するなか、経済波及効果の大きいMICEにはそれだけ大きな期待をかけているということ」(産業労働局観光部企画課)と説明する。新たに策定した戦略では、誘致目標実現のため、①グローバル対応の集中的な強化、②多様なポテンシャルを生かしたMICE開催効果の最大化、③デジタル技術の活用促進によるMICEの付加価値向上、④多様な主体と地域との連携推進、⑤環境に配慮した社会づくりに資するMICEの推進、という5つの柱を掲げた。

 なかでも最も力を入れるのが、グローバル対応強化の一環として行われる、主催者のインセンティブを一層高める支援策の充実だ。具体的には開催の金銭的なサポートを意味する、つまりは実弾攻勢だ。外国人参加者延べ泊数が400泊以上など一定の要件を満たした国際イベントに対し、開催者側には会場借上費用や参加者の渡航費・宿泊費等の助成を行い、誘致者に対しては誘致活動に伴う広報宣伝費や印刷製本費等の経費を助成する。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年3月27日号で】

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