観光のレジリエンス 旅行ビジネスの弾力的復元へ

2023.01.02 00:00

(C)iStock.com/koyu

2023年は観光のレジリエンスが試される年になる。パンデミックにより荒廃した事業環境から観光・旅行ビジネスは弾力的に復元していかなければならない。一方でコロナ禍という外的要因は旅行業の姿をしなやかに変えつつあるように見える。

 コロナ禍によりどん底に突き落とされた観光・旅行業だが、水際対策の緩和や旅行支援策などにより、国内旅行、海外旅行、訪日旅行の各分野で少しずつ動き出しつつある。市場にも新しい観光の可能性が芽吹き始めようという段階だが、ここから始まるアフターコロナのニューノーマル時代に、観光・旅行業界はレジリエンスを発揮して新たな発展を遂げることができるだろうか。

 日本全体が危機に直面した11年の東日本大震災の後、盛んにレジリエンスという言葉が社会を飛び交った。しなやかな強靭さをもって危機を克服し、復活を遂げる。あるいは元の状態を上回る未来を実現するという思いがこの言葉に込められた。観光・旅行業界に関していえば、東日本大震災を上回る惨状をもたらした今回のパンデミック後はまさしくレジリエンスが問われる局面となる。

変わる旅行業者の顔ぶれ

 観光庁によると、22年4月1日時点の旅行業者・代理業者は9991社、旅行サービス手配業者を含めた総数では1万1791社となった。これをコロナの影響がまだほとんどない20年4月1日時点の数字と比較すると、旅行業者・代理業者数は1万410社からコロナ禍の2年間を挟んで419社減り減少率は4.0%となった。しかし旅行サービス手配業者を含む総数では1万1948社から157社減少してはいるものの減少率は1.3%にとどまっている。

 旅行業界にとってコロナ禍の影響があまりにも甚大で深刻だったにもかかわらず、旅行事業者総数は1.3%しか減少しておらず、減少率は意外にも低い。観光も旅行も市場がゼロになったコロナ禍にあっても、いわゆる旅行業者というもの全体が市場からの退出を余儀なくされたわけではない。そう解釈できる数字でもある。

 登録業種別にこの2年間の事業者数の変化を見てみる。最も事業者数が減少したのは旅行業者代理業で13.4%の減少。資本力と企業体力に劣る事業者の退場が多いものと見られるが、事業規模が小さいからこそ事業継続の断念をいち早く決断できたと見ることもできる。また、代理販売という形で流通の歯車の1つとして機能してきた旅行業者代理業の役割が減退しコロナ禍によってそれが加速したとも考えられる。旅行業界の流通の簡素化はコロナ禍前からの傾向で、旅行業者代理業の存在感がすでに減衰し始めていた感も否めない。

 所属旅行業者との親子関係に基づく旅行業者代理業は、親たる所属旅行業者の事業継続の断念や、事業規模縮小などの影響を大きく受けざるを得ない面もある。そうした傾向を踏まえるとコロナ禍が、旅行業者代理業の未来展望にひときわ重くのしかかったとしても不思議はない。

 旅行業者代理業に次いで減少率が大きいのは第1種旅行業で、686社から631社へ8.0%減少した。退場した旅行会社の中にはかつては海外パッケージツアーの先駆けとなったブランド「ルックワールド」を展開し60年以上の歴史を誇った日通旅行や、静岡鉄道の子会社として1965年に創業し地方の老舗旅行会社だった静鉄観光サービスなども含まれる。

 第1種旅行業は国内旅行から海外旅行まで幅広い分野の旅行を手掛けることができ、企画・造成・募集・販売まで総合的にビジネス展開できる、いわば総合旅行会社だ。しかし広範な事業の優位性がある一方で、専門性などで競争力に欠け、組織的な柔軟性や機動力を失っていた面もありそうだ。さらに第1種旅行業にとって収益の大黒柱だった海外旅行需要が蒸発したことで修復しようがない傷を負ってしまったことは容易に想像できる。

【続きは週刊トラベルジャーナル23年1月2・9日号で】

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