ロングトレイル 地域をゆっくりと歩こう

2022.08.01 00:00

(C)iStock.com/simonkr

海外では確固たるレジャー分野のロングトレイルだが、日本でも注目が高まりつつある。6月には北海道から沖縄までを結ぶ全長1万kmのロングトレイル構想も発表された。高まるアウトドアレジャーへの関心に応えつつ、訪日外国人旅行者にアピールできるコンテンツとしても期待されるロングトレイルの可能性とは--。

 トレイルあるいはロングトレイルという名称は日本ではまだまだなじみが薄いのが現実だ。日本のロングトレイルの先駆けとされる信越トレイルが開通したのが05年。その後、各地に生まれたロングトレイル運営機関や団体が集まり、11年に日本ロングトレイル協議会が発足。日本ロングトレイル協会が設立されたのは14年のことだ。信越トレイル開通から数えても、日本におけるロングトレイルの歴史は17年に過ぎず、認知度が不十分なのは致し方ないところだ。

 とはいえ日本のレジャーの中にロングトレイル的な分野が存在しなかったわけではない。ハイキングやウオーキング、トレッキングといった複数の外来語と、登山という言葉が、ロングトレイルの中身を分け合っていたといえる。

 日本ロングトレイル協会によるロングトレイルの定義は、「歩く旅」もしくはそのために造られた道のことだ。登山との最大の違いは、登頂が目的となる登山に対し、ロングトレイルは登山道やハイキングルート、自然散策路などを歩きながら、地域の自然や歴史、文化に触れることを楽しみとする点だ。日本語として使われているハイキングと軽登山を合体させたような意味合いだ。

 ちなみに欧米ではハイキングの定義が幅広く、日本のハイキングと登山の大部分を含むという。岩山や雪・氷に覆われた山を特別な装備を使用して登る登山以外はハイキングに分類。逆に言えば特別な装備を使わず旅することをハイキングとしているわけで、ハイキングとはロングトレイルを歩く意味にもなる。日本ロングトレイル協会では、この欧米的なハイキングの概念を取り入れ「美しい自然のなかを歩くこと」をハイキングとし、「歩く遊び・歩く旅」の総称にしていきたい考えだ。

3500万人以上の市場性

 ロングトレイルの市場規模と成長の可能性はどうか。ロングトレイルの盛んな英国では「フットパス」と称するルートが全国を網の目のように結び総延長22万5000㎞、その経済波及効果は1兆3000億円に達するとの報告もある。もちろん現在のフットパスは100年近い時間をかけて普及した歴史と英国の歩く文化があってこそ。日本の現状にそのまま当てはめることはできないが、英国の状況は目指すべき1つの目標になりそうだ。

 日本の登山やハイキングの市場規模は各時代で上下してきた。1990年代は日本百名山ブームで中高年の登山が急増した。しかし対象年齢者の高齢化やブームの一巡によりその後は市場が伸び悩む。そこへ現れたのが山ガール。2010年前後から存在感を増し、新たな市場が広がっていき、現在のアウトドアブームにもつながっている。

 総務省の社会生活基本調査16年度版(5年ごとの調査・21年度調査結果は12月公表予定)によると、ロングトレイルの対象年齢となりそうな20~60代男女のうち、余暇活動として登山を楽しんでいるのは対象年齢人口の約12%。これを21年時点の対象年齢人口約8250万人に当てはめると登山人口は約990万人と推計できる。

 前述の通り、ロングトレイルの対象は登山人口にハイキングやウオーキング等の人口を加えたものとなる。笹川記念スポーツ財団の「スポーツライフに関する調査2020」によれば、週1回以上の散歩・ウオーキングの実施率は35.7%で、推計実施人口は3692万人。散歩とウオーキング、ハイキングを明確に線引きすることは難しいが、約半分がロングトレイルの対象となり得ると仮定すれば約1850万人。これに登山人口の990万人を合わせた約2840万人程度を現状のロングトレイル対象人口と想定することもできるだろう。

【続きは週刊トラベルジャーナル22年8月1日号で】

関連キーワード