兵庫県龍野地区、分散型ホテルで地域再生 民間投資呼び込む 改正不特法も活用

2022.06.27 00:00

kurasuシリーズ第1号の「148kawaracho」。ホテルは1棟貸し切りで、名称には番地を用いた

 兵庫県たつの市龍野地区で分散型ホテルの概念を取り入れたエリア再生プロジェクトが進んでいる。古民家を改修した飲食店の開業が相次ぎ、昨年3月には「城下町古民家ホテルkurasu」の第1号が開業。今春に2棟目が誕生した。各施設の開発は政府や行政の補助制度を活用せず、民間投資を原資とする。目下、不動産特定共同事業のスキームを活用し、3棟目の開発に乗り出している。

 地区内に分散したホテルに泊まり、食事は飲食店を巡ってもらう仕組み。プロジェクトを動かす中心軸はNPO法人ひとまちあーとだ。不動産管理・開発を目的に立ち上げた緑葉社が投資家から調達した資金で物件を修復し、サブリースする。15年以降、30もの店舗が開業した。両法人の代表を務める畑本康介氏は「居抜きの状態にして手渡すため出店しやすい」と理由を語る。

 3棟目に用いる不動産特定共同事業は、複数の投資家から資金を募って不動産を運用し、得た収益を配当する仕組み。法改正で小規模不動産に門戸が開かれ、オンラインの取引環境が整った。現在、許可事業者のエンジョイワークスと組み、4400万円を募集目標にクラウドファンディングを実施している。

 投資は5万円から可能で、出資者にはホテル優待券のほか、ガイドブック制作など町に関わる機会を提供する。畑本代表は「まちづくりに興味のある人にとって、新しいスキームを学ぶ機会にもなる」と参加を呼びかける。

 折しも訪日観光が再開された。重要伝統的建造物群保存地区として武家屋敷や醤油蔵が残る風情や発酵文化は富裕層の関心を引きそうだ。ホテル運営を担うmasumasuのアーデン歩代表取締役は「海外と深い関係をつくり、徐々に育てていきたい」という。

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