ASTAがCDCのガイドラインに苦言
2022.02.28 00:00
クルーズ旅行は米国の旅行業界で重要な位置を占めるが、コロナ禍によりクルーズ船は1年以上就航できず、再就航を始めたクルーズ会社も短期間で集客をするために料金を割引せざるを得ないのが実情だ。カーニバル・クルーズ・ラインやロイヤル・カリビアン・グループの22年前半のクルーズ料金にも30~40%の割引がみられるほどである。こうしたなかで1月初旬のトラベルウイークリーはコロナに関連して米疾病対策センター(CDC)が出したガイドラインに米国旅行業協会(ASTA)が苦言を呈したことを伝えている。
CDCはワクチン接種のいかんにかかわらずクルーズ旅行を避けるようにというレベル4のガイダンスを1月5日に発表した。理由は、船という狭い場所にいる人々の間でウイルスが簡単に広がるからというものだ。CDCのガイダンスでは「予防接種の状況に関係なく、世界中のリバークルーズを含むクルーズ旅行は避けるように。とりわけコロナによる病気のリスクが高い旅行者は、ワクチン接種の状況にかかわらず、世界中のクルーズ旅行を避けることが特に重要である。クルーズ旅行に行くことを決定した人は、予防接種の状態や症状にかかわらず、旅行開始1~3日前と旅行終了3~5日後に検査を受ける必要がある」としている。
これに対しASTAのゼーン・カービー会長は直ちに声明を発表。「クルーズ旅行を避けるべきであるというCDCのガイダンスは旅行業界を標的にした過剰反応である」と訴えた。同会長は声明の中で、クルーズ休暇を楽しむことは地元の食料品店やレストランを訪れることとは違い、クルーズ会社はCDCと緊密に協議して自主的に常に厳格なコロナ対策を実施している点を強調。その対策には、検査、ワクチン接種、衛生管理、マスク着用、その他の科学的対策およびコロナの潜在的な症例に対応するための手順が含まれ、平均的なクルーズ船を米国の1つの州に例えれば間違いなく最も安全な州であることを説明した。
ロイヤル・カリビアン・グループによると、21年6月に米国でクルーズが再開されて以来、110万人の乗客を運び、このうち陽性者は1745人で陽性率0.02%。1月4日時点、米国の州の中で最も陽性率の低いのはアラスカ州の9.4%で、最も高いのはジョージア州の38.7%だという。
「オミクロン株が最初に見つかったアフリカ南部からの旅行者にもはや責任がないようにクルーズ旅行にもオミクロン株まん延の責任はない。にもかかわらず、クルーズ旅行を標的にしたと思える差別的な過剰反応が続いている。旅行業界は他の業界より厳しく規制されているため、コロナが増加したり、新種が出現したりすると大きな打撃を受ける。『手元に金づちしかなければ、すべての物が釘のように見える』という古いことわざのような行動様式はやめるべきだ」
カービー会長はオミクロン株拡散当初にアフリカの南部8カ国への渡航禁止令が出された時にも米国政府に反対意見を述べている。
コロナによる規制は各国さまざまである。ASTAは旅行業界をやり玉に挙げるのではなく、事実に基づき公平に対応するよう政府に求めた。米国以外の国でも同様の指摘がなされてもよさそうだ。
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