観光庁予算の要諦 コロナ後の産業再生どう果たす
2022.02.14 00:00
ウィズコロナで旅行・観光ビジネスを再起動していかねばならない今年、日本は観光産業の再生をどう果たしていくことになるのか。その方向性を示す22年度観光庁予算が固まった。大型の経済対策関係予算で補強される施策の中身とは。
22年度の政府予算案が昨年12月に閣議決定した。日本の観光立国推進の旗振り役として政府・与党で2枚看板を務めてきた菅義偉氏と二階俊博氏が要職から外れてから初となる政府予算案において、コロナ禍からの観光産業再生を目指す観光庁の予算はどのような内容に落ち着いたのか。
22年度当初予算額は、国際観光旅客税の財源が前年度の260億6500万円から80億9500万円へ3分の1以下に減少する影響もあり、222億5300万円と前年度の408億7400万円から45.6%減少した。観光庁は国際民間航空機関(ICAO)のデータを基に22年度の出国者数を900万人程度と見積もり、旅客税の財源額を算出した。これを除く一般財源による予算額は141億5800万円。前年度の148億900万円と比較して4.4%減となった。
一般財源は微減にとどまったものの、国際観光旅客税の財源を含む合計予算額が大幅減となった観光庁予算だが、もう1つの要素を加味してみる必要がある。それが21年度経済対策関係予算のうち観光庁関係予算として政府が用意した約1兆4442億円の存在だ。このうち新たなGoToトラベル事業に割かれる予定の約1兆3239億円を除くと約1203億100万円が各種事業に使える計算になる。この金額は20年度第3次補正予算で用意された観光関係予算649億9100万円の85.1%増に相当する。
つまり、観光庁予算として使える実質的な予算額は、222億5300万円に1203億100万円を加えた総計1425億5500万円ということになるわけだ。21年度は408億7400万円の当初予算に20年度補正予算の649億9100万円を加えた総計が1058億6500万円だったことを考えれば、22年度は370億円近い大幅増と見ることもできる。
インバウンド需要が蒸発するなか、観光産業は甚大な影響を受けている。このため予算編成の考えについて観光庁は、短期的には「事業継続と雇用維持」、中長期的には「宿泊施設や観光コンテンツ、観光地の魅力増大」を多面的に支援することが基本方針であるとした。
この方針に沿って4つの政策の柱を掲げている。1つ目の「国内交流の回復・新たな交流市場の開拓」に一般財源7億7300万円(前年度比53.4%増)、2つ目の「観光産業の変革」に同23億3100万円(15.7%増)を投じる。3つ目の「交流拡大により豊かさを実感できる地域の実現」は一般財源9億1400万円に加え、インバウンドに関連する事業の特性から国際観光旅客税財源44億800万円を用いて計53億2200万円(62.7%減)。4つ目の「国際交流の回復に向けた準備・質的な変革」には、一般財源95億1600万円と国観光旅客税分の36億8700万円を合わせ、計132億300万円(43.8%減)を用意した。
国内で新たな交流市場を開拓
「国内交流の回復・新たな交流市場の開拓」の中で4億4800万円の新規予算が組まれたのが、ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業だ。内容は、来訪者増加の新たな仕掛けづくりと、旅行者を惹きつける地域のレガシー形成の2本立て。仕掛けづくりは、コロナ後にニーズが高まると思われる密を回避した自然体験や田舎への憧れなどを原動力とする旅行ニーズを「第2のふるさとづくり」やワーケーションの仕組みを通じて地域へ誘導・獲得する方法を模索するもの。DMOや自治体が主体となってモデル実証などに取り組むことを想定している。インバウンド回復までは国内観光需要の掘り起こしが欠かせないため、こうした仕掛けづくりにより、何度も地域に通う旅行スタイルの定着を図り、より稼げる地域の実現を目指す。
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