キャンプブームを生かす 市場育成と地域活性化に向けて

2021.09.27 00:00

(C)iStock.com/baongern1

キャンプがパンデミック下で新たなブームを呼んでいる。20年のオートキャンプ参加人口は前年比3割減に踏みとどまり、21年もキャンプ場の新規開業が相次いでいる。このブームを一過性に終わらせず、さらなる成長につなげることができるか。

 仙台郊外に位置する都市近郊型リゾートの仙台ロイヤルパークホテルは、ホテル内でグランピングが楽しめるホテルだ。グランピングといっても宿泊は伴わず、アウトドアで食事を楽しむのが目的で、アウトドア活動としてはデイキャンプのジャンルに分類される。同ホテルは17年に広大なガーデンエリアを有効活用する狙いでグランピングテントを設置し、館内レストランの料理の提供を始めた。テント開設以来、安定した人気を博してきたが、今年6月にはグランピングテントをリニューアル。合わせてレストランの屋外テラス席も拡張した。このところのキャンプブームやグランピング人気を受けて対応を強化している一例だ。

 このほか、星野リゾートも星のや富士でグランピング体験を提供するなど、フルサービスのデラックスホテルを含めた宿泊施設が競うように取り組みを強化するほど、キャンプブームやアウトドア志向が世の中に浸透しつつある。

第2次ブームの到来

 キャンプやアウトドアの一大ブームが起きたのは1980年代から90年代半ばにかけてだった。代表的なアウトドア雑誌「BE-PAL」が創刊した81年は、日本におけるアウトドア文化の黎明期。70年代に米国で盛り上がったフラワーチルドレンによるヒッピー文化や、ウッドストックフェスティバルに象徴される野外フェス文化の影響で盛り上がったアウトドア志向や自然志向が、憧れのアメリカンスタイルとして日本の若者にも大きな影響を及ぼし始めたころだった。

 その後もアウトドア人気は高まっていったが、90年代前半のバブル崩壊以降、低成長時代を迎えると、自然の中で家族と過ごす心地よさを求める人々の増加がアウトドア人気を後押し。オートキャンプ参加人口(1年間に1泊以上オートキャンプを行った人数)は、96年には1580万人のピークに達した(日本オートキャンプ協会)。94年から98年までは1300万人を超えており、第1次キャンプブームとなった。以降はブームが沈静化し、2008年には705万人とピーク時の半数以下まで減少した。しかし、13年からは7年連続で増加を続け、19年には860万人を記録するまで拡大した。この時期を捉えて第2次アウトドアブームとする見方もある。

 アウトドア関連ビジネスの市場規模も拡大している。矢野経済研究所によると、アウトドア市場規模(アウトドア用品市場やキャンプ場などの関連施設市場、ガイドなどの関連サービス市場から、マリンレジャーやウインタースポーツ関連市場を除いた市場規模)は、19年に5169億円に達しており、17年から比べて約11%拡大している。

 20年のオートキャンプ参加人口はコロナ禍で610万人規模まで縮小したが、コロナ禍前と比較して3割減にとどまった。日帰りを含む国内旅行は前年に比べ5割減少するなど多くのレジャー分野が壊滅的打撃を受けるなかで、キャンプは大健闘した分野といえる。キャンプに行けない事情を抱えながら、それでもキャンプへの気持ちが勝るアウトドア愛好家たちが「おうちキャンプ」なる新たなアウトドア体験を“発明”したのもブームの証左かもしれない。

平日の稼働支えるソロキャンパー

 日本オートキャンプ協会の「オートキャンプ白書2021」によれば、今後もブームの継続が期待できそうだ。20年のキャンパーの平均年齢は42.5歳で、30代が29.4%、40代が35.2%と両世代で全体の7割近くを占める。これまで現在40代の第2次ベビーブーム世代が子育て年齢に差し掛かるとともにキャンプ人口が増加してきた。ちなみにキャンプを始めたきっかけは、「子供のため」が26.6%で最多となっている。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年9月27日号で】

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