スーパーシティ DXが変えるまちの未来
2021.08.02 00:00
最先端デジタルテクノロジーの導入と大胆な規制緩和により未来都市の実現を目指すスーパーシティ法が成立し、未来都市候補の公募に31自治体が名乗りを上げた。スマートシティ実現については後手に回った日本が、一気に形勢逆転を狙う独自のスーパーシティ構想が動きだした。
スーパーシティ法は昨年5月に参議院本会議で可決され6月3日に公布、9月に施行された。正式名称は「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律」。その名称が示すように、スーパーシティ構想とは国家戦略特別区域の1つの形態で、スーパーシティ型国家戦略特別区域に指定した区域内で大胆でダイナミックな規制緩和を実施し、先進的なデジタルテクノロジーを駆使した未来都市を最短・最速で実現しようというものだ。
スマートシティの具体化で国際的に出遅れてしまった日本が、未来都市づくりで世界に追いつき追い越すための一発逆転をかけた政府肝入りの構想がスーパーシティといえる。発案者でもある片山さつき地方創生・規制改革担当相(当時)はスーパーシティ構想の実現に向けた有識者懇談会で、「後発のメリットを生かして、日本がいまやるならば、どういう競争力を磨いていくか」と懇談会メンバーに課題感を投げかけている。
内閣府は「未来型の都市作りに際して日本には利用可能な要素技術が揃っているのに、実証するための場所や環境がない」(地方創生推進事務局)ことがスマートシティで外国の後塵を拝している大きな理由と説明しており、スーパーシティ構想を環境整備推進の原動力としたい考えだ。
スーパーシティ構想はその性格上、官民の連携なくしては実現不可能で、プラン段階から企業の参画が不可欠だ。企業にとっても大きなビジネスチャンスをもたらすプロジェクトであるだけに民間企業の関心も高い。一方で地方自治体にとってはデジタル先端企業とのコネクションに弱点があるケースが少なくない。そこでスーパーシティ構想に取り組む地方自治体とスーパーシティ構想に技術を提供したい企業のマッチングを図る目的で、内閣府が19年6月にスーパーシティ・オープンラボを開設。現在200社以上が参加している。
政府がスーパーシティ構想に期待をかけるのは、日本が提唱する未来社会のコンセプト「Society5.0」に合致するからだ。科学技術基本計画で示された同コンセプトは、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(同2.0)、工業化社会(同3.0)、情報化社会(同4.0)に次ぐ社会のあり方を示したもので、デジタルテクノロジーを駆動力とするイノベーションによって実現する未来社会を想定している。スーパーシティとSociety5.0のいずれも日本オリジナルの用語でありアイデアだ。この分野での巻き返しにかける政府の意気込みが感じられる。
スマートシティかスーパーシティか
スーパーシティ構想はAI(人工知能)やビッグデータ等の先進デジタルテクノロジーを活用した都市を実現し、社会のあり方に変革を起こすのが狙いだ。しかもエネルギーや交通といった個別分野でスマート化を図るだけでなく、最先端技術を生活全般にわたって実装し、住民目線で未来社会を実現するのがスーパーシティ構想だとされる。政府の表現を借りれば、スーパーシティ構想とは、いわば「丸ごと未来都市」を目指す取り組みだ。
海外におけるスマートシティ事情は、大手IT企業と連携してビッグデータを活用した街の管理を目指したカナダ・トロントや、道路交通情報をAI分析し交通取り締まりの徹底や渋滞緩和を実現する中国・杭州市、デジタル決済やデジタル身分証システムなどを構築するシンガポールなどのほか、韓国・松島市がゼロから新たな都市作りに取り組むなど先行事例が多数ある。それでも「世界を見渡してもスーパーシティのような『丸ごと未来都市』はいまだ実現していない」というのが政府の認識だ。
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