数字が示す地域の観光 都道府県の予算、宿泊者数、観光消費
2021.06.21 00:00
長引くコロナ禍は都道府県・政令指定都市の観光関連予算にも大きな影響を及ぼしている。訪日需要復活の見通しが立たないなか、外国人旅客誘致予算を減額する自治体が急増。一方で瀕死の観光産業を救うため、国内旅客や近隣住民の誘致に力を入れる自治体が目立つ。
トラベルジャーナルは毎年、全国の自治体に当該年度の観光関連予算に関するアンケート調査を実施している。対象は全国47都道府県と20の政令指定都市で、今年度は計67、すべての自治体から回答を得た。調査では毎年、予算の増減を前年度と比較できるように本予算(当初予算)での回答を求めているが、組織改正等の理由により前年度との単純比較が困難な場合など予算額一覧表の備考欄に説明を付記している。
21年度の観光関連予算について前年度より予算を増額したのは33自治体(24道府県・9政令指定都市)、前年同額が1自治体だった。前年度より予算を増額した自治体数は17年度44、18年度40、19年度36、20年度40、21年度33と推移しており、今年度は最近5年間で最も少ない自治体数となった。増減率を見ると2桁以上の増額が25自治体(17道府県・8政令指定都市)で、こちらは20年度と同数。
地域ブロック(運輸局管内)別に見ると、中部、近畿、九州が各6自治体で増額となっている。増額自治体数の比率の高い地域としては、道と札幌市とも増額の北海道や沖縄のほか、中部が8自治体中6県市が増額となる。一方、東北は7自治体のうち増額は福島県のみ。四国は4自治体のうち香川県のみだ。東北は20年度には5県市が増額しており、その反動と見ることもできる。四国は20年度も増額が徳島県のみとなっている。
観光関連予算額が2年連続で増加したのは21自治体(15府県・6政令指定都市)、3年連続は11自治体(7府県・4政令指定都市)、4年連続は5自治体(3県・2政令指定都市)、5年連続になると札幌市、福島県、岡山市の3自治体に限られる。
最大の観光関連予算規模を持つ東京都は、17年度以降、前年度比で17年7.0%増、18年度1.8%増、19年度12.0%増、20年度12.2%増と昨年度までは4年連続で増額してきた。東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて国内外へのアプローチを強化してきたわけだが、紆余曲折があった同大会実現が予定される21年度は5年ぶりに観光関連予算が減額した。予算が21.4%減少した結果、2年連続で200億円を超えていた予算総額についても160億円台まで縮小している。
21年度の観光関連予算の伸び率が大きかったベスト5は1位が16.9倍の石川県、2位が3.5倍の北海道、3位が3倍の三重県、4位が2.5倍の名古屋市、5位が2.3倍の滋賀県。
マイクロツーリズムに注力
1位の石川県は観光関連予算として164億7941万円を割く。うち「ほっと石川観光プラン推進ファンド」予算が150億円(貸付金)を占める。それ以外ではコロナ禍で厳しい経営環境に陥った観光産業の持続のための需要喚起に6億円、3大都市圏からの誘客促進に1億470万円を投じる。
2位の北海道は21年度の新規事業はないが、道内の観光需要促進のための道民割引事業に19億7430万円、交通事業者の利用促進を目指す支援事業に22億円を用意。教育旅行支援事業にも15億8669万円を割く。
3位の三重県は新規事業として観光デジタルトランスフォーメーション推進に1億78万円を割き、県が蓄積してきたデータやコンテンツ等を連携・連動できる体制を作り、県内観光事業者のサービス向上や商品開発につなげる計画。また地域DMOを通じて持続可能な観光地域づくりを促進するため「みえ観光の産業化推進委員会負担金」として11億4122万円を用意している。
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