活気づく分散型ホテル 観光庁予算化で後押しなるか

2021.03.29 00:00

(C)iStock.com/EkaterinaMoichanova

町全体を1つの宿泊施設に見立てたいわゆる分散型ホテルが広がりを見せている。新たな宿泊形態として取り組む事業者も増加。注目が高まるなかで、政府も地域再生の新たな手法として後押しする姿勢を見せており、さらなる活性化の可能性を秘めている。

 分散型ホテルとは、地域内にフロント機能や客室棟を分散させたり、飲食提供機能を地域の飲食店が担ったりすることで、町や村全体が1つの宿泊施設となって来訪客を迎える形態のことだ。その原型はイタリアで地方の小村再生の原動力となったアルベルゴ・ディフーゾとされる。アルベルゴはイタリア語で「宿」、ディフーゾは「分散した」の意味だ。宿泊施設の機能が地域内に分散するため宿泊客の回遊性が高まり、地域内の各種事業者や住民との接点が拡大し経済効果が高まる。宿泊客が地域の暮らしを体験するコンテンツの造成にもつながり、地方創生の手法としても注目度が高まっている。

 観光庁は21年度予算と一体で編成された20年度第3次補正予算で、「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」として550億円を計上した。3次補正の総額からGoToトラベル事業分を除いた650億円の8割以上を占める目玉事業だ。具体的な内容は、廃屋の撤去等による景観改善、公共施設への民間活力の導入促進などだが、もう1つ、宿泊事業者を核とした複数事業者による連携・協業等の促進が挙げられ、ここに含まれるのが分散型ホテル(小規模宿泊事業者の協業)の取り組みだ。分散型ホテルにとっては格好の追い風となりそうだ。

文化財から空き家に広がり

 町に点在する空き古民家等の再生を通じた地域活性化を図るため、NIPPONIA(ニッポニア)のブランド名で展開するNOTE(ノオト)は昨年9月以降、施設を続々と増やしている。ニッポニアが再生した宿泊施設は昨年8月末時点で全国19地域に81棟131部屋あったが、展開地域を10地域増やし、合計で29地域・112棟194部屋とする計画を発表。その後、6施設を新規オープンし、今年3月時点で全国24地域に展開を拡大。21年度中には、さらに6施設の開業を予定している。

 ニッポニアは、地域の暮らしを歴史的・文化的資源とともに次世代に継承することを理念に掲げており、文化財の保存と活用の両立を実現する試みでもある。その意味では19年4月に施行された改正文化財保護法の存在も拡大計画を後押ししてきた。コロナ渦中に積極的な拡大策をとる理由について同社は、密でない地方に対するニーズが増していることに加え、「何よりもこれを機に過疎化、空き家化が進む地域への地方回帰につながればと考えている」と説明する。

 豪商や旧家の館など歴史的建築物や歴史的町並みの中にある古民家の再生を手掛けるNOTEに対し、一般的な空き家の再生を手掛けるコラレアルチザンジャパンも着実に事業を拡大している。同社は富山県南砺市の井波地域を拠点に宿泊施設の企画・運営・プロデュース事業などを行う。山川智嗣代表取締役は、「空き家の再生や活用を考えたとき、多くを占めるのは普通の古い家屋。その再生を図り活用するのが仕事だと考えている」と語る。素人目には古い物件にしか見えない家屋も、建築家でもある山川代表が目利きして新たな命を吹き込む。

 さらに、単に建築物を再生させるだけでなく、そこに職人を軸としたブランドプロデュース事業を重ね合わせているのがコラレアルチザンジャパンの大きな特徴だ。井波(旧井波町)は人口8000人の小さな町だが、200人もの彫刻師・彫刻家が暮らし、漆職人や仏師、建具職人など関係事業従事者を含めば400人近くが伝統工芸に携わる世界でもまれな地域。「木彫刻のまち井波」として日本遺産にも登録されている。この職人の存在を生かした取り組みが同社の分散型ホテル「Bed and Craft(ベッドアンドクラフト)」だ。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年3月29日号で】

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