ソロ旅攻略 コロナ時代の消費をつかむ

2021.03.22 00:00

(C)iStock.com/RichVintage

コロナ禍により、ソロ旅(ひとり旅)への注目度が一段と高まっている。数年前から若い女性や中高年男性を中心に脚光を集め、観光事業者のソロ旅プロダクトも拡充してきた。そこへコロナ禍が襲い、ポストコロナ時代の旅行トレンドとしても需要拡大が期待される。

 「ひとり旅はワケあり旅」「ひとり客は要注意」。旅行店舗や宿泊施設が警戒感を抱いていた時代が嘘だったかのようだ。いまやソロ旅は観光・旅行業界の期待と注目を集め、各企業が競ってアプローチする市場となりつつある。

 数年前からすでに兆候がはっきりしていた。たとえば女性向け情報ウェブ媒体のオズモールが17年に発表した東京の女性600人を対象にした調査では、ソロ旅経験者は全体の過半数を超える53%を占めた。きっかけは趣味の追求や自分へのご褒美で、半数以上が20代までにソロ旅を経験している実態が明らかにされた。

 その後もソロ旅傾向は進行している。19年にホテルズ・ドットコムが発表した調査によれば、2人に1人以上がひとり旅が流行していると感じており、8割以上が「グループ旅行に参加している最中でも1人になりたい」と思ったことが報告されている。調査結果を受けてホテルズ・ドットコムは「自分と向き合う『じぶん時間』を大切にするため、休日に旅行に出かけたいと思う人がいる。このトレンドをキャッチし、新たな旅行のカタチである一人旅を応援する」とソロ旅重視を宣言。「#気ままなソロ旅」キャンペーンを実施した。

 こうしたソロ旅志向は、コロナ禍を経てますます強まるとみられる。ブッキング・ドットコムは先ごろ、同社が実施した価値観調査に基づいた予測として21年に流行する旅行タイプを挙げた。「リラックスという贅沢」「大切な人との再会」「週末旅行」「グルメ旅」と共に筆頭に挙げられたのが「癒やしの一人旅」だ。

 同社では「コロナ禍で抑えられていた旅行への欲求により、思い切って1人で旅をしてみたいと思う人が増え、ひとり旅のトレンドは今後ますます大きくなることが予想される」としている。その根拠としているのが、コロナ禍前後のデータ比較。ひとり旅を計画していた日本人旅行者はコロナ禍前は16%だったが、コロナ禍後は将来計画するという回答が27%に増えたという。

 JTBの年末年始(20年12月23日~21年1月3日)の旅行に関する意識調査でも、ソロ旅の増加が示されている。調査結果のうち同行者の項目に着目すると明らかだ。同行者で最も多いのは家族連れの61.6%だが、前年との比較では3.6ポイント減少している。母娘や3世代を含む「それ以外」も減少。また家族と友人・知人、友人・知人は増加しているものの、それぞれ0.1ポイント、0.9%の微増にとどまった。これに対して、同行者なしの1人という回答は3.7ポイント増えている。コロナ禍を経てソロ旅志向はますます強まっているようだ。

拡充するソロ旅対応商品

 こうしたソロ旅への注目度の高まりを受けて、さまざまな観光関連事業者によるソロ旅市場への本格参入が目立つ。熟年夫婦などのカップルでの参加が一般的なクルーズ旅行でも新たな動きがみられている。

 キュナード・ラインは22年のクイーン・エリザベスの新クルーズプランとして初めて「ソロ・クルーズ」を発表した。従来の1人客専用客室(シングル)に加え、人気客室タイプ「海側バルコニー」を1人客用に用意。料金設定は従来1室2人が基本で、1室1人利用の場合は2人利用の175%の設定だったが、ソロ・クルーズでは客室数限定で150%の料金を設定した。さらにサービス面でもソロ旅を意識して、ダンスホステス/ホストなども手配できるようにしている。

【続きは週刊トラベルジャーナル21年3月22日号で】

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