観光目的の往来「五輪が指標」 蒲生観光庁長官が見解、業界は年明け要望

2020.11.30 00:00

海外旅行は歴史的にも重要としつつも慎重姿勢

 短期や長期のビジネス目的での海外との往来が一部制限付きで再開するなか、レジャー目的の訪日旅行と日本人海外旅行の再開が新たな焦点となっている。旅行・観光業界からは早期実現を求める声が高まっているが、観光庁の蒲生篤実長官は11月20日の定例会見で、「東京オリンピック・パラリンピックが1つのスタンダードになる」との見解を示した。業界は観客の受け入れに試行期間が必要として、年明けにも再開にこぎ着けたい考えだが、国内で再び感染者数が拡大する状況下、規制緩和には慎重な姿勢だ。

 JATA(日本旅行業協会)と日本観光振興協会が実施したインバウンド受け入れ再開に向けた意識調査によると、五輪前までが約8割を占め、そのうち年内や21年3月までと早期を希望する回答は半数近くに上った。これを受け、JATAと全国旅行業協会(ANTA)は「準ビジネストラック(管理型旅行)」として21年1月から観光目的での出入国許可を政府に強く要望。ビジネスでの往来が解禁された14カ国・地域やハワイでの順次実施を求めた。日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)も会員の窮状を踏まえ、早期の海外旅行再開を求めている。

 こうした要望について、蒲生長官は理解を示しつつも、感染者の拡大に加え、海外からの入国・帰国時に国の要請に反して公共交通機関を利用する人が相次いでいる現状を憂慮。「制度面の緩和とどう折り合いをつけていくかが課題だ」と述べた。

 五輪の開催に向けては、迎え入れる国・地域や会場への入場者数、行動制限などが今後検討されることになる。「これが見えてくると日本人の海外渡航においても基準になる」としている。

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