旅行業者の自主廃業増加、静鉄観光やトラベル日本も コロナ追い打ち

2020.11.23 00:00

地場に根差した旅行会社として55年にわたり営業して
きた静鉄観光サービス。SNSでは惜しむ声がみられた

 コロナ禍で旅行業から撤退する会社が目立ってきた。「四季彩の旅」などを展開する第1種旅行業者のトラベル日本は12月25日付での営業終了を決め、静岡鉄道子会社の静鉄観光サービスも21年3月末で営業を取りやめる。両社とも創業から50年以上の老舗だが、新型コロナウイルス感染拡大が打撃となり、この先の事業継続が難しいと判断した。コロナ禍で倒産に至る旅行業者は4~10月で12件と宿泊業の84件に比べ大幅に少ないが、その裏で自主廃業が増えているとみられる。

 静鉄観光サービスは1965年創業の第1種旅行業者として、静岡市を拠点に企業の慰安旅行や修学旅行など団体旅行をメインに取り扱ってきた。だが、近年の団体旅行需要の減少や総合旅行大手との競争激化、インターネットの普及に伴う個人手配の広がりなどを背景に売り上げが減少していた。静岡鉄道によると、90年代のピーク期に比べて取扱高は5分の1、店舗数は20店舗から3店舗に縮小していたといい、コロナの収束が見えないなかで事業継続を断念した。トラベル日本もコロナの影響が大きかったようだ。

 静鉄観光サービスは会社を解散する。従業員の雇用契約も終了するが、再就職を支援していくという。バスを利用した団体旅行などはグループの静鉄ジョイステップバスが対応する。

 自主廃業の目安の1つとなるのが旅行業団体からの退会だ。JATA(日本旅行業協会)が理由を明示している6月までの退会リストを見ると、5月と6月は退会した61社のうち6割を超える39社が旅行事業廃止を理由に挙げている。また、全国旅行業協会(ANTA)は2~9月の正会員の入会者137社に対して退会が237社と大きく上回っている。

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