観光のニューノーマル 地域と挑む新たなカタチ

2020.11.16 00:00

(C)iStock.com/frentusha

新型コロナウイルスによって世界が変わり、ニューノーマルの時代が始まりつつある。人々が新しい生活様式への適応に努めるいま、観光も従来にない発想が必要とされ、新たなモデルの創造が求められている。観光のニューノーマルに向けて動き出した官民の取り組みとアイデアに注目した。

 観光の再開には、十分な感染防止対策を講じ3密回避にも配慮した、これまでとは異なる旅のスタイルが必要となっている。近隣エリアの旅行需要を取り込もうというマイクロツーリズムは、移動を最小限に抑えることで感染拡大リスクを回避するという発想で、感染状況に地域差があるなかでも受け入れ地域側の不安感を刺激せずに旅行需要を喚起できるアイデアだ。また、近場の旅行であることから多頻度化という効果も期待できるとあって広がりを見せている。

 マイクロツーリズムは全国的に人の移動制限が緩和されて以降も有効な取り組みだが、全国的に人の移動の制限が緩和され、GoToトラベルキャンペーンなどによって旅行需要が総体的に高まってきた段階では、別の形による感染防止と観光再開の両立も考えていかねばならない。また、そういった努力こそが今後続いていくニューノーマルの時代の観光の可能性を切り拓く力となるものだ。

 1つの考え方として有望なのが、特定の時期や場所に需要が集中することで発生する混雑を回避するため、休暇取得の分散化を図るというアイデアだ。政府はこの考え方を積極的に推進してく方針を掲げる。コロナ禍のさなかの7月に決定した観光ビジョン実現プログラム2020にもそうした考えが反映されている。同プログラムでは、国内の観光需要の回復と観光関連産業の体質強化策として、ワーケーション、ブリージャー、サテライトオフィスの活用など働き方改革とも合致したより安全で快適な新しい旅行スタイルを普及させるとしている。加えて、今年度内に改定を予定している観光立国推進基本計画にも、こうした考えを反映する方針も明らかにしている。

 環境省は20年度補正予算で確保した財源により、国立・国定公園、温泉でのワーケーション推進事業を実施。7月には新宿御苑でワーケーションの体験イベントも開催した。

 観光庁はワーケーション、ブリージャー等の新たな旅のスタイルを普及するため、有識者、関係省庁、経済界、観光関連業界等の関係者から成る新たな旅のスタイルに関する検討委員会を10月に設置。まずは手本を示す意味も込めて職員によるワーケーション体験に取り組んでいる。10月には北海道・洞爺湖温泉で職員が実際に体験したうえで、普及促進に関して現地関係者と意見交換する場を設けた。職員からは「リラックスした雰囲気の中で仕事をすることで、快適な緊張感と高揚感のもと、集中力を発揮できた」などと、効果を評価するコメントが寄せられたという。

全国規模で機運醸成

 観光庁はまた、ワーケーションなどに限らない、より幅広い形での新しい旅のスタイル探しも行っている。20年度補正予算で実施している誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成実証事業がそれ。新しい旅の魅力創造への取り組み意欲を全国各地域で高めていくのが狙いだ。これからは観光客が安心して観光を楽しめるよう、地域が一体となって新たな旅行スタイルに対応した着地整備を行っていくことが重要になるとみている。そこで、地方公共団体やDMO(観光地域づくり法人)等が観光イベントや観光資源をこれまで以上に安全で集客力のあるものに磨き上げていくよう促す目的で実証事業を公募した。

 片山敏宏外客受入担当参事官は、「ウィズコロナ時代の観光のあり方については皆が模索している段階だが、その答えを見つけるための事業。また、感染拡大を抑えつつ観光促進もという両にらみの取り組みであるという点ではGoToトラベルと共通しており、GoToの地域版になればという願いも込めている」と語る。実証事業の成功モデルは他地域の参考になるよう情報を共有していく方針で、観光のニューノーマル化を全国規模で進める構えだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年11月16日号で】

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