GoToトラベルの3カ月 観光産業に何をもたらしたか

2020.11.09 00:00

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新型コロナウイルスの感染拡大で危機に直面した観光産業の支援策としてGoToトラベルキャンペーンが7月22日にスタート。9月末までに宿泊旅行で2500万人泊以上が利用された。キャンペーン開始から3カ月が過ぎ、観光産業に何をもたらしたのかを振り返る。

 コロナ禍で大打撃を受けた観光産業を助けるため、政府は20年度補正予算でGoToトラベルを中心とするGoToキャンペーン事業に1兆6794億円を計上。緊急事態宣言の全面解除後の観光需要復活を目指した。夏休みシーズンに間に合うよう7月の開始が期待されたが、運営業務の公募のやり直しなどもあり準備は遅れ、最終的に公募が締め切られたのは6月末。そこから委託事業者を決定し運営体制を整え7月中に開始するにはそもそも時間不足で、感染状況も不安定なままという状況だった。

 赤羽一嘉国土交通相も6月末の段階ではキャンペーン開始は8月の可能な限り早い時期としていた。しかし7月10日の会見で開始時期を前倒しし、7月の4連休前の7月22日からキャンペーンを開始する意向を明らかにした。さらに17日には開始時期を正式決定するとともに対象から東京を除外することも発表した。直前の東京除外だったため、すでにキャンペーン対象として販売済みの商品もあり、キャンセル料の扱いを巡って旅行者や旅行業者が混乱に陥った。最終的に旅行業者は旅行者からキャンセル料を求めず、旅行業者に負担が生じた場合は実損分を国が補填することで決着した。

 旅行者と事業者からの問い合わせに対応するコールセンターも7月20日に開設され、とにもかくにもGoToトラベルは7月22日にスタートした。

 国交省が事務局の報告をもとにまとめたキャンペーンの宿泊割引にかかる利用実績は、7月22日から9月末までで少なくとも2518万人泊、割引支援額で約1099億円に達している。スタートから8月末までの利用実績は1339万人泊で、9月15日までは1689万人となっており、9月の前半だけで350万人泊、9月1カ月間では1179万人泊が上乗せされた。

 国内宿泊需要への効果も表れつつある。9月末に発表された8月の宿泊旅行統計調査では、日本人宿泊者数の前年同月比が51.5%減で7月の47.9%減より悪化した形だが、前年8月は絶好調で過去最高記録だったことを考えれば3.6ポイントの悪化で収まったのはGoToトラベルなどによる国内旅行需要喚起があったからとも考えられる。客室稼働率が7月の29.6%から8月に32.1%に上昇したのも明るい材料。特に3密回避が期待されるリゾートへの需要がGoTo効果で高まり、リゾートホテルの客室稼働率は6月に11.7%だったが、7月24.4%、8月に34.2%と回復している。

 旅行会社も恩恵を受ける。観光庁によると国内主要旅行会社48社の国内旅行取扱額は6月が前年同月比87.9%減だったのに対し7月は78.4%減と10ポイント近く回復。8月はさらに2ポイントほど持ち直し76.3%減となった。

 一方で恩恵を受けているのは一部の高級宿泊施設や大手旅行会社で、それ以外の宿泊施設や中小旅行業者は恩恵に浴していないとの声も上がる。赤羽国交相は「全体の割引支援額から1人当たり旅行代金を試算すると平均1万2000円余りという数字が出ており、必ずしも高い価格帯の宿泊施設に利用が偏っているとは言えない」としている。

 中小旅行業者からは、立て替えている国からの支援額の支払いが遅れ経営を圧迫しているとの指摘や、各種問い合わせに対する事務局の対応の不備への不満も聞かれる。これを受けGoToトラベル事務局は8月1日からコールセンターのオペレーターを増員し回線数も増設。土日曜・祝日を含めた年中無休での受け付けや受付時間延長といった体制強化を図っている。

東京解禁で事業者の予算不足も

 東京居住者の旅行や東京を目的とする旅行がGoToトラベルの対象になることが9月15日に発表され、同18日からは商品販売がスタート。10月1日からの旅行は全国民、全都道府県がキャンペーン対象となった。人口1400万人を抱える大市場、東京の取り込みが可能になったことで、国内旅行需要のさらなる回復に期待が膨らんだ。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年11月9日号で】

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