GoToトラベル 需要喚起キャンペーンの生かし方

2020.07.13 00:00

(C)iStock.com/imacoconut

新型コロナウイルスのダメージを回復する取り組みが始まりつつある。なかでも政府が打ち出した1.7兆円規模のGoToキャンペーンは観光業界の期待が集まる一大事業だ。この枠組みをどう生かし旅行需要喚起につなげていくのか。工夫のしどころだ。

 新型コロナウイルス感染症の拡大により急減した人の流れやにぎわいを回復し、地域を再活性化するための消費喚起を目指す政府のGoToキャンペーン事業が動き出す。20年度補正予算として計上された予算額は1兆6794億円。未曽有の大規模予算が組まれた同事業は、感染症の収束を前提とし、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象に官民一体型の需要喚起策として進められる。

 キャンペーンは旅行、飲食、イベント、商店街と大きく4つに分かれている。このうち旅行分野のGoToトラベル事業は、旅行・宿泊割引や地域共通クーポンとして約1兆1248億円、事務委託費約2294億円、総額約1兆3500億円の予算が割かれる中核事業だ。国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の2分の1相当額を支援するもので、限度額は1人1泊当たり2万円(日帰り旅行は1万円)。連泊や利用回数の制限はなく、キャンペーン期間中は何回でも利用できる。支援額のうち、旅行代金の割引に7割程度を充て、残る3割程度は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与するのが特徴だ。

 クーポンは1枚1000円単位でキャンペーン事務局が商品券として発行し、旅行会社や宿泊施設で配布する。想定される金銭等のやり取りは、たとえば1人1泊2万円の旅行を購入する場合、支援は1万円分だが、旅行者は旅行代金として1万3000円を支払う。しかし、3000円分のクーポンが提供されるため、実質的に1万円の支援となるわけだ。

 割引対象は、宿泊旅行の場合は宿泊と交通機関のセットプラン、宿泊のみの商品、宿泊に準ずる商品(クルーズ、夜行フェリー、寝台列車)で、予約方法は旅行会社や予約サイト等を経由、または宿泊施設の直販システム経由が条件となる。個人旅行だけでなく、修学旅行や職場旅行といった団体旅行にも割引は適用され、こちらも旅行会社や予約サイト等を経由して予約する。

 日帰り旅行の場合は、航空機や列車、バス、船での移動と、旅行先での消費となる食事や観光体験とのセットプランを旅行会社や予約サイト経由で予約した場合に適用される。たとえば、往復乗車券と日帰り温泉券や、高速バス往復と体験型アクティビティーあるいは旅先でのランチ等との組み合わせが想定される。

中小事業者の参加呼びかけ

 地域共通クーポンは、旅行先地域のクーポン加盟店で使用できるものとし、地域の観光協会やDMO(観光地域づくり法人)、商工会議所を通じて参加・登録を呼びかけていく。たとえば、土産物店、飲食店、観光施設、地域内で利用できる交通機関が想定される。

 観光庁は全国の約5万軒の宿泊業者、約1万社の旅行業者がキャンペーンに参画し、クーポン利用対象の土産物店や飲食店、観光施設等については数十万以上が参加することを想定している。特に中小事業者に裨益するよう行き渡らせたい考えだ。キャンペーンの実施は観光業界の要望に応えたもので、事実、多くの事業者が参加に意欲を示す。一方で、やきもきするのは、キャンペーンの具体的な開始時期が7月1日時点でも決まっていないためだ。鍵を握る運営事務局の選定は公募による企画提案書の提出を6月29日に締め切り、内容を審査・評価している段階にある。

 赤羽一嘉国土交通相は6月16日の会見で「8月の早い段階で開始できるよう、可能な限り速やかにしっかりと準備を進めていきたい」と目標を示した。経営が苦しい観光関連事業者に配慮し、夏の需要獲得に間に合わせるためで、対象期間については、観光庁の田端浩長官が「需要喚起を夏・秋を中心に大体6カ月半くらいと考えている」との見通しを示した。

【続きは週刊トラベルジャーナル20年7月13日号で】